6
僕より少しだけ背の低い佐藤は良い感じに抱いている感覚があった。
(…本来なら男と抱き合うなんて絶対に嫌だけど。)
汗や精液に濡れた身体。
速い鼓動。
軽く括れている腰。
手に触れている肌の感触。
すぐ耳元で聞こえる息遣い。
幾ら自分が服を着ているといっても、佐藤は裸なわけで。
そんな状態のまま抱きしめているから、相手の身体の変化をほとんどすべてといっても良いほどに感じ取れてしまう。
「ぁ、の、…っ、え、と、い、今、おれ、だ、だき、抱き締…っ、」
「こうやってされるの、嬉しい?」
「……ッ、う、うれ、しい…っ、」
慌てふためく佐藤にぽつりと問いかけを零すと、勢いよくこくこくと頷く頭。
その汗ばんだ髪を梳くようにして撫でながら、躊躇いがちに唇を開く。
「…佐藤」
「な、に?」
「怖かった?」
「…っ、」
耳元でそう問いかけると、思い出したらしくびくっと震える。
抱き締めた身体から、その鼓動の速さや震えが伝わってきた。
「…ごめんな」
「っ、こわ、ぐ、ない…ッ、だ、いじょう…っ、ぶ…ッ、」
驚いたような声に涙を滲ませ、安堵からか小さい子どものようにもっとぼろぼろに泣き始めた佐藤は、僕の肩に顔を埋めてくる。
しばらくそうしていると、身に着けているTシャツ越しに濡れた感触が肌を一瞬温めて、すぐに冷えていった。
やわらかい髪が頬や首筋をくすぐる。
「ぅ゛ぇ…っ、のら、のら゛ぁ…っ、」
「はは、…佐藤の顔、泣きすぎてぐちゃぐちゃ」
「だ、だれのせいで…っ、」
こうなってるんだ、と怒った声が、僕と目が合った瞬間不自然に止まる。
…そして何故か、驚いたように見開かれる瞳。
なんだと怪訝に眉を寄せれば、頬を朱に染め、ぷいと顔を背けられる。
「……」
「何、その変な顔」
「も、もっと普段から、そうやって笑ってくれればいいのに」
「やだよ」
「……えー、…ん゛ぅ…っ、」
なんとなく、手の平でぐいとそのほっぺを拭ってみた。
…濡れた涙の感触。
拭った瞬間に漏れる佐藤のぐぐもった声。
「…っ、?!」
ついでに、その頬を両側から手で包むように触れてみた。
…ああそういえば、と頭の隅で思い出す。
初めて会った時もこんな感じだったっけ。
「…っ、う、わわ…っ、」
わざとキスできそうな距離まで顔を寄せると、その顔が噴火しそうになってて面白い。
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