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…それが、彼女なんだろうか。
そう考えると思い当たる節を色々と見つけてしまえるのが本当に嫌だ。
「…あーあ、」
嬉しくなんてないのに。
嫌なことがある時の方が、自然と笑顔になる。
好きな人がいるって事実だけでも嫌なのに。
…その相手の名前なんか聞いたら、嫉妬と悲しみがもっと強くなりそうで聞くのをずっと躊躇っていた。
けどまさか、こんな状況でそうかもしれない、って思う相手を知ることになるとは思わなかった。
「っ、」
さっきの声が、鼓膜に残っている。
……俺の名を呼ぶ時とは、全然違った。
もし知り合いとか友達なら
普通、あんなに愛しそうな声で名前を呟くものだろうか。
「……う、」
胸が、苦しい。
想像するだけで息もできなくなりそうになる。
ほんのわずかな想像だけでこれなら、その光景なんて見たらきっと心が死んでしまう。
ぐちゃって音を立てて潰れて、引き裂かれて、死んだ方がマシだと思うようになるんだろう。
…今でさえそれが予想できるんだ。もしかしたら、あの時こっぴどく振られていた方が良かったのかもしれない。もっと楽に諦められたのかもしれない。
「…野良の、ばか」
さっきの仕返し、とばかりに吐き捨てる。
呟いた声は自分でも酷いと思うぐらい、熱を帯びて震えていた。
今寝ぼけて俺を抱き締めたのも、あの人だと思ってるからなのかな。
(…野良は、どんな風に女の人とセックスするんだろう)
「………」
こっそりとその寝顔をもう一度覗き見る。
その端整な顔はいつものツンツン具合がまるで嘘のように、いまだに無防備な表情で小さな寝息を立てて眠っていた。
「…野良が、悪いんだ」
わざわざ、お前を好きだって言った俺の目の前でそんな風に無抵抗だから。
寝言で、…他の女の名前なんて呼ぶから。
ゆっくりと掛け布団をめくる。
もぞもぞとその布団の中にもぐりこみ、暗い視界の中見える…野良の下半身に心臓が早鐘を打つ。
黒いジーンズを履いた…すらっとした長い脚。
(…下半身だけで格好いいとかマジかよ)
勿論上半身…というか顔は布団の外だ。
残念ながら、顔は見えないこの状況。
でも、いざ見つかったときにこっちの方が良い気がするから、…仕方ない。
逆に顔見えない方がエロい気もする。
「……あれ、ちょっと勃ってる…?」
『そこ』がズボンの布地をいつもより少しだけ押して主張している気がする。
「……まさか、」
ハタと思いつく。
(…あの人の夢を見て、勃起してるのか…?)
「…っ、許せん…」
ばか。野良の馬鹿野郎。くそったれ。
極力起こさないように、ボタンをはずし、膨らんでいるように見えるそこを挟まないように…ジーッとチャックをゆっくりと、本当にゆっくりと下ろしていく。
「…はぁ、はぁ…」
手が、震える。
緊張する。
もし野良にばれたらどうしようとか、それだけじゃなくて。
このやっちゃだめだろう感満載のアブノーマルなシチュエーションにも興奮して息が荒くなった。
よっぽど疲れてるみたいだったし、あと野良は大抵一回寝たらすぐには起きない。
(…てなわけで、そこまで大きな動きをしなければ、大丈夫だと思うんだけど)
一番下までチャックを下ろし、一旦息を吸う。
(…ここからが問題だ)
野良の両膝をちょっとだけ立てた。
それから、息を止め、できるだけズボンの端を指でぎゅっと持つ。
ちょっとずつ下のベッドに尻側のズボンの布地を押し付けるようにしてかなりのスローペースでそろーりそろーりと下におろしていく。
「…ん、…」
「っ、」
やっとのことで太腿の下あたりまで降ろせたところで、上方から小さく呻くような声が聞こえた。
思わずびくってなって、動きが止まった。
けど、
「………」
大丈夫だったらしい。
起きた様子はない。
それからトランクスを下ろす…と、
「…っ、すげ、え…」
きゅって男らしく引き締まってる腰の下…
そこにある…野良のちんこは…めちゃくちゃ悔しいけど、俺のより大分でかかった。
しかも、形も良い。
ちっちゃいころから一緒だしちんこもたまに温泉とかで見てきたけど、好きになる前と後では色々と受ける衝撃が違う。
「…ちんこだけでも惚れられそう…」
ルックスだけでも敵が多いのに、ちんこまで逞しかったからもうどうしたら良いんだ。
…どう見ても女の理想的なちんこって感じで、これを挿れられてセックスしたらどれだけ気持ちいいんだろうかと想像したら下半身がきゅんと疼いた。
…いつの間にこんなにでっかくなったんだ。
尻も引き締まっててかなりエロい。
「…なんで、俺は女じゃないんだろーな…」
普通に女に生まれて野良に愛されてセックスできる人を羨ましいと思う。
…あの人達も、俺が女だったら良かったって、何回も言ってた…し。
(考えるのやめろ俺…!)
嫌な記憶を振り払うように首を小さく振る。
それよりも、だ。
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