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いつの間にか近づいていた距離と、俺の顎に添えられる指。
くい、と軽く上げられ、視線が絡むと頬が更に熱をもったのを自覚する。
「随分、懐かしいことをしてるね」
「…っ、野良、俺…」
首輪から伸びた鎖をするりと撫でる指先に、彼の表情に見惚れる。
「やっとあの場所から逃げられたのに、こんなものまで持ち出してきて」
重なる。
俺を見下ろす野良の姿が、あの日と重なる。
「…………好き、だ…」
ゾクリと震えた。
一度溢れた感情をとめることはできない。
だめだとわかっていても、思い出せば出すほど、止まらなくなってしまう。
「…俺、…野良が…好き…なんだ…」
「………」
「野良、…」
泣きそうになりながら手を伸ばそうとすれば
相手の瞳に苛立ちが滲んだのを見て、びくりと震える。
血の気が引くほど身が竦み、わけもわからずに謝らなければと頭を埋め尽くす思考に、懸命に冷たい唇を開こうとしていれば、……頭を撫でられた。
「佐藤は、結局”飼い犬”のままだね」
「…っ、」
聞き覚えのある単語に血の気が引く。
脳裏をよぎる過去の出来事に、喉が塞ぐ。
……いつまで『そう』しているのか、と責められた気がした。
それを詠んだのか、「責めてるわけじゃないよ」と静かに否定する言葉。
「でも僕は好きな人がいるから、佐藤の気持ちには応えられない」
「……知っ、てる」
泣きそうになりながら返した言葉に、野良は困ったように笑みを零した。
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