2

いつの間にか近づいていた距離と、俺の顎に添えられる指。
くい、と軽く上げられ、視線が絡むと頬が更に熱をもったのを自覚する。


「随分、懐かしいことをしてるね」

「…っ、野良、俺…」


首輪から伸びた鎖をするりと撫でる指先に、彼の表情に見惚れる。


「やっとあの場所から逃げられたのに、こんなものまで持ち出してきて」


重なる。
俺を見下ろす野良の姿が、あの日と重なる。


「…………好き、だ…」


ゾクリと震えた。

一度溢れた感情をとめることはできない。
だめだとわかっていても、思い出せば出すほど、止まらなくなってしまう。


「…俺、…野良が…好き…なんだ…」

「………」

「野良、…」


泣きそうになりながら手を伸ばそうとすれば
相手の瞳に苛立ちが滲んだのを見て、びくりと震える。

血の気が引くほど身が竦み、わけもわからずに謝らなければと頭を埋め尽くす思考に、懸命に冷たい唇を開こうとしていれば、……頭を撫でられた。


「佐藤は、結局”飼い犬”のままだね」

「…っ、」


聞き覚えのある単語に血の気が引く。

脳裏をよぎる過去の出来事に、喉が塞ぐ。

……いつまで『そう』しているのか、と責められた気がした。

それを詠んだのか、「責めてるわけじゃないよ」と静かに否定する言葉。


「でも僕は好きな人がいるから、佐藤の気持ちには応えられない」

「……知っ、てる」


泣きそうになりながら返した言葉に、野良は困ったように笑みを零した。
prev next


[back][TOP]栞を挟む