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…あがが、嬉死ぬ…。
「……(ごくごく…)」
二度目のごく。
大量に出てきた口の中の唾を飲みこみ、こそっと視線を上げてみた。
やはり、この破壊力。
間近に見える真剣な表情は、思わず目を奪われるほど格好良い。
…大人びた、何処か憂いを帯びた切れ長の瞳に長い睫毛が影を落としている。
(…ぶは…っ、)
あまりの興奮に吐血しそうになった。
こりゃー犯罪級だ!とぺしっと額に手を当てる。
よく教室で本を読む野良を遠目に見て、失神しかけてる女子と同じレベルで今死にそうになった。
「……だから、こっち見るなって言ってるだろ」
「ご、ごめん」
長い間じーっと見つめ続けていると、読書の邪魔になったらしい。
今度は殺意のある視線が飛んできた。
謝って、すごすごと視線を引き下げる。
「……」
「………」
カチカチ、と秒針の動く音だけが部屋で鳴る。
後は一定の時間おきにページをめくる紙の音。
「…………」
「……(……暇だな)」
これでも充分幸せで、もうこれ以上ない幸福なんだけど、
やはり心臓はずっと異常な心拍を奏でていることはできないから、次第にこの状況に慣れてきてしまう。
(…やっぱり、人間って凄いな)
「……くあ、」
欠伸が出る。
しばらくそうしていると、緊張が緩んで眠たくなってきた。
今日は金曜日だから普通に学校があった。
真面目に勉学に取り組み、野良に恋目線を送る女子達に嫉妬する。
いつもと変わらない毎日。
そんな学校が終わった後、
家に帰ってすぐに飯(勿論野良のも)を作り、その成果物を食べたらもう夜の9時だった。
この緊張しすぎる状況に加え、疲れてるのもあって自然と眠たくもなる。
「……」
ぱら。
紙をめくる音。
片手では俺の肩を掴んでいるから、器用に左手だけでページをめくっている。
野良がやると何をやっても様になるから凄い。
…イケメンじゃなかったら似合わないだろうこの光景が、本当に心から感心するくらい絵になっていた。
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