不機嫌な野良(佐藤ver)

***


…普段は無表情。

たまに拗ねるとか子どもっぽいところはあるけど、基本は見事なほどに行動言動ともにクールで冷めきっている彼。

クラスでも女子にそのクールさが良い、時々の子どもっぽさが良い等とにかくキャーキャー騒がれ、今までに告白された数はもう…それはもう数えきれないほど。(【俺的調査】より)


――――そんな野良様の本日の第一声は、


「佐藤、身体貸せ」


だった。

わー!野良だ!と笑顔で迎え入れようと鍵を開け、玄関の扉を開けた俺は、へ、とアホみたいな声を上げることしかできない。


「え、な、なに…っ、?!!ぃ゛…っ、」


通り抜けざまに強く腕を掴まれて、玄関から部屋の中に引きずるようにして戻されていく。
冷凍庫より冷たい表情をした野良は、手に提げていた鞄を放り投げるようにして捨てた。

掴まれたままの腕にプレス機で潰されているような力が込められる。


「…っ、ぃ゛、だ…っ、痛いって、」

「今日は昨日みたいに優しくしないから」

「え、ちょ、待って、…ていうかなんで、」


突然の状況に頭が全くついていかない。

胸倉を掴まれたことによって、首元が締め付けられて息が一瞬詰まった。

至近距離で冷たい表情の野良と目があう。
ドキリと色んな意味で心臓が跳ねた。


「苛々してるからに決まってんだろ」

「それ理由になってな、…ぎゃあ?!」


不機嫌MAXに加えていつもより乱暴な口調で最早説明するのも面倒くさいみたいな雰囲気で身ぐるみを引っぺがされる。

ていうより、もうヤる目的の男みたいにズボンと下着だけ引っぺがされた。
足を持ち上げられたせいで顔から床に突っ込む。痛い。


「あーあ、佐藤が女だったら突っ込めたのに」

「っ、」


後ろから聞こえてきたその吐き捨てるような言葉にぎゅ、と胸が潰されているように苦しくなる。


「…お、俺が女だったら犯罪だろ」


喉の奥から込み上げる涙のせいで、言い返す声が震える。

でも、何か言わないと泣いてしまいそうで、どっちにしろ俺は野良に何をされても結局は思う通りにされるしかないから、これが今の自分にできる精いっぱいの反抗だった。


「まぁいいや。なんにしろ佐藤を泣かせれば少しは気分もマシになるだろうし」

「…っ、」


相変わらず野良の声は冷え切っている。


「…それに、もしかしたら今から佐藤を好きになれるかもしれないしね」

「……」


好きになる気なんか、ないくせに。


(…ああ、もう)


本当は、さっきの一言で今日の野良の目標は達成されそうだった。

でもこんなことで泣くのは悔しいし嫌だから、熱い瞼に力を入れて、唇をぎゅ、と噛む。

…今日は一体何をされるのか、想像もしたくなかった。
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