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けど、あの時丁度良いタイミングで現れたにゃんこ。
(…それに、)
「…っ、」
考えたくはない。ことに、気づいてしまう。
…オレが猫に噛まれたって言っても、何の反応もなかった。
前はオレに絶対に危害を加えないって言ってたはずなのに。
その猫が噛んだとオレが言っても、驚いた様子なんて全くなかった。
さっきだって、なんでここに来たかを言う前に、具合が悪いってことを言いあてて、
…まるで、全部最初から知ってたみたいに。
「…っ、わざと、じゃない、よな…?」
「…何のことですか?」
問いかけた声が、
まるで自分のものじゃないみたいに上擦って、情けない音になる。
下着の中でグチョグチョなちんちんや玉袋を弄る手の動きが、止まった。
「…わざと、にゃんこに、オレを、噛ませた、とか」
そんなわけない、よな?ともう一度強く確認しようとした声は、
「……」
目を逸らし、長い睫毛を軽く伏せたさっくんの表情の変化を見て、不自然に止まる。
朝の桃井への悪い予感より、こっちはもっと当たってほしくないと思った。
違う、って言ってほしい。
『違いますよ。俺が夏空様に、そんなことするはずがないじゃないですか。』
って、そう、笑いとばして、そうじゃなくても、ちょっと怒って反論してくれる。
そう、それだけのために、した質問、で
「…いや、そんなわけない、よな。だって、さっくんがそんなことする理由なんかないし、」
無駄口を、叩く。
いつもより早口に、たくさん話す口とは正反対に、カラカラに乾いてしまう喉を必死に動かして、返ってくる沈黙に変わって、さっくんの弁解をじぶんでする。
「…オレを、傷つける意味なんて、な」
「いいえ」
”いいえ?”
「それ、は、どれを否定したんだ?」
怖い。唇が震える。
おしっこが漏れそう、とかそういうのもあるけど、それだけじゃない。
下着の中から、手が抜かれる。
「今日ずっと、思ってました」
「…っ、なに、を、」
優しくオレの手を掴んださっくんが、ぽつりと言葉を零した。
それに呼応するように、触れられてる手が、ガクガクと震える。
…オレのおしっこで濡れた手で、指を絡ませるように手を繋いでき、て、
「夏空様が怪我をすればいいのに、と」
「な、」
愕然とする。
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