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言ったところで意味のないことだとわかっているのに、口から滑り落ちてしまった。
「…どうして?」
「ど、うしてって、」
何故そんなことを聞くのかと戸惑い、言いよどむ。
絶対に報われることのない感情を、いつまでも抱き続けていたいやつなんかいないだろう。
…特にさっくんの場合は、オレのことを好きになる気がしない。
(…苦しいだけの恋は、嫌だ)
「やめて、解放されれば…オレは楽に」
なれる気がするんだ。
少しだけでもさっくんから遠くにいければ、きっとこの感情も少しずつなくなって消えるはずで。
その思いを吐き出そうとすれば、
「俺も、夏空様が好きです」
「――っ、ぁ、」
優しく呟かれた言葉に、ズクン、と身が震えた。
”好き”
愛しい声で紡がれた、心の底から求めていたもの。
いつから起きていたのか、全てわかった上で発されたようなタイミングが余計に奥深くを抉る。
叫びだしたいような魂の歓喜と、狂うほど泣き喚いてしまいたくなる感情が全身を波のように襲う。
「っ、最低だ、ほんと。お前は、」
「……」
あの時は、…オレが真剣に告白した時は、そう言ってくれなかった。
…好きだって、返してくれなかった。
「もう前とは違うんだぞ…っ。好きって言っても、さっくんのは違うじゃないか。オレは本気なんだ、だから、オレとは、全然…っ、」
じたばた暴れて身を捩り、腕の中から抜け出そうとすると余計に力が込められ、密着した。「好き、です。…っ、だから、」と再度零され、息が詰まるような抱き締め方に、思わず動きがとまる。
「だから、離れていかないでください」
「……っ、」
お願いします、と少しだけ震えながら懇願する声。
縋りつくように背後から抱き竦められ、
「…俺の傍にいて」
弱々しく吐息まじりに囁かれた台詞に、ああもう、ばか、狡すぎると詰ってやることすら胸が詰まってできない。
――――――――――
…なんて、酷い男だろう。
決して『好き』にはなってくれないくせに、傍にいてくれと言う。
「…っ、…さいてい…だ、」
さっくんを好きなわけじゃなくて、本当に気持ちいいことが好きなだけだったら良かったのに。
引き留めるためだけの”好き”に、
…まるで大事だから離したくないと訴えるように抱き締めてくる身体の感触に、泣きたくなるほどの喜びを感じてしまう自分が、一番嫌だ。
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