学校
***
差し出された手を取り、ゆっくりと車から降りる。
…完全に回復したかと言われればそうではないけど、いつまでも学校を休んではいられない。
「……オレの言ったこと、忘れてないだろうな」
「はい。承知しております」
じっと見上げて意味もなく睨むと、零れるような笑みが浮かぶ。
(…本当に、わかってるのか)
到底信じられない。
”オレ以外との不必要な会話、接触を禁止とする。優しくするのも、笑いかけるのも、甘やかすのもだめだ”
流石に拒否すると思っていたのに、容易く受け入れられた命令。
今まであれだけ周囲に優しさと甘さを振りまいてきた人間が、それをするのは不可能に近い。
「…わかってるなら、良い」
ふん、と顔を背け、そろそろ校舎に向かおうと、手のひらに添えられているさっくんの手から、離そうとする。
と、
「お気をつけて行ってらっしゃいませ」
きゅ、と軽くそこを握られ、さっくんが腰を屈めるのが視界の端で見えた。
(…え、)
童話で見たどこかの国の王子様みたいに、すぐそこに跪く姿。
…一瞬、手の甲に触れた吐息と 柔らかい唇の感触 に
「…っ、!!!」
不意打ちすぎて、思わず、かぁぁあ…と頬が熱くなったのを自覚した。
それを見て、その整った顔が微笑んだのがわかって更に動揺する。
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