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あの夜”私にされた酷い行為”の内容について辛そうに言葉にする。

”私”に笑ってされたのだと。
行為の最中、”私”にこうされるのが好きでしょうと嘲笑われながら何度も刺され、傷を抉られ、血を流させられたのだと。
嫌だと言ってもやめてくれなかった、それどころか執事になったことをいいことにそれ以上の酷いこともされたのだと。

実際にあったことのように詳細に、言いよどむことなく


「…は、…?」


そのどれも、全くした覚えのないことばかりで。
呆気にとられて感情のままに声を出せば

まるで全てさっきの音海君の言うことが真実だとでも言いたげに「…夏空様、」と助けを求めるような視線を向ける。

どうして…?咲人まで、何を言ってるの?

これじゃ、本当に私が悪者、…ッ、


「…っ、咲人、ほら早く私の方にきて。音海君に嘘をつけって言われたんでしょう?」


そうに決まってる。

咲人が私を貶める作り話なんかをするはずがない。


「私といればそんな汚いことしなくていいんだよ?また愛し合おう?咲人もそれを望んでるでしょ?」

「さっくんに触るな」


近づいても、音海君が咲人を遠ざけてしまう。
正しいことをしているとでも言いたげに。

…すべて自分が仕組んだことなのに、なぜ平然としていられるの…?
犯罪を犯しておきながら咲人の傍に当然のようにいて、まだ従えようとしている。


「さっきも言っただろ。さっくんを傷つけることは許さない」


澄ました顔で冷たく言い捨てる音海君に、カッと頭に血が上った。


「ふざけないでって言ってるでしょ…!!」


咲人の恋人は私で。

主人も私で。

あの日咲人と結ばれた日からそれは永遠に終わることがない。

それを横からぶんどって、咲人の綺麗な身体に傷までつけて、今度は私のせいにして、


「この異常者!!!」


殴ってやろうと振り上げた腕。

背は私の方が低いけど、握った拳の速度は私の方が早かったから音海君は防御が間に合わない。

絶対に当たる、と思った 

その時、


「っ、さ、くと…」


腕を、掴まれた。
音海くんを庇うように前に出た咲人が、私の腕を掴み、無表情に見下ろす。

ゾクッと寒気がした。

…こんな表情の咲人は、見たことがない。

冷たくて、無機質な瞳。
整った顔つきが、その冷徹な印象を更に濃くする。


「俺は、生涯夏空様のものです」

「…っ、」


その薄い唇から零された台詞に、「…やめてよ」震える声が漏れた。
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