家族ごっこ
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あれ以来、少しぎくしゃくとした雰囲気を残しながらも、いつも通りの日常に戻った。
以前より一層家から出してもらえなくなったり、転ぶかもしれないから危ないと家の中でどこに移動するにもお姫様だっこばっかりされて筋力よわよわになってたりはあるが、…まぁ、うむ…いつも通りだといってもいいだろう。
(…やりすぎじゃないかとは思うけど、さっくんに特別扱いしてもらえるのは正直、嬉しい)
それに不安がるから、オレもさっくんを今まで以上に特別扱いするってことで、オレの命令以外で(絶対に命令しないけど)他人とそういうことをしないという指きりをした。
…普通嫌がっても良いのに、凄く嬉しそうだったな。
さっくんがもう不安になったり、嫌な思いをしないように、オレはこれからも一緒にいると決めた。
ずっと二人で過ごしてきて、他に家族はいない。
…オレにはさっくんしかいない。
「さっくん、今日の夜だけ『兄ちゃんでー』してほしい」
「……?え、と…?どういう、…?」
悩ましげな表情を浮かべるさっくんに、「あのな、」と事の発端を思い出す。
正孝には「兄ちゃん」がいるらしく、物の取り合いや些細なことでよく喧嘩するといつも話していた。
でも、嫌そうにしながらも、なんだかんだと仲が良さそうな感じが伝わってきて毎度羨ましくなる。
…そりゃあさっくんがいるから、別に寂しくはないけど、いいなとはやっぱり思ってしまうもので。
家族を演技でもいいから体感したい。
たまにこうしてごっこ遊び的なものを昔からたまにしてたし、基本何でもいうことを聞いてくれるから、味わってみたかった。
兄弟とは、どういう感じなのかを。
あと、…さっくんと兄弟ごっこすることで、ちょっとでも心の距離が近づけばいいなぁというか、…さっくんにとって、オレが主人ではなくもっと色々話していい相手だと少しでも認識できるようになってほしいというか…、
「それでだな、兄ちゃんってどういう、ものかなー、って、気に…なって、」
さっくんにしてほしいんだ、…と尻すぼみに言ってみる。
学校から帰ったらすぐお願いしてみた。
「…兄、ですか…、」
いまいち乗り気でないさっくんに、しょぼんと頭をたれる。
難しい頼みだっただろうか。
…オレもさっくんも、多分『家族』に良い思い出がない。
だから余計にやりづらいかもしれない。
「…うー、…だめか…?」
眉をへたれさせながら、見上げるようにして窺う。
と、
「…っ、わかり、ました。わかりましたから、…嗚呼もう、貴方はいつも狡い、」
頬を染め、不覚、という表情で口元を手で覆ったさっくんがもごもごと口ごもる。
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