13

その台詞に自然とさっくんの首筋に視線が向く。
桃井とキスしようとしたって理由で、嫉妬に駆られてオレが刻んだ…透き通るような肌に残る跡。

…自分の汚い心を表しているようで、目をそらしてしまう。


「…痛みで、死ぬかもしれないと思いました。」

「…っ、」

「苦しくて、辛くて、今すぐにでも壊れて消えたいと、」


陰惨とした声は暗く、頬に触れている手が、微かに震えていた。
さらりとした黒い前髪のかかった眉間にぎゅっと皺が寄り、彼の整った顔が痛みに染まる。


「冗談だと、思われるでしょう」

「…あ、たり前だろ。オレが、ちょっと避けたくらいで」

「……」


そんなことで、簡単に死を選べるはずがない。
重い本音を零し、彼は「だから、」と続ける。


「もし、貴方を手に入れてしまったら…俺はきっと抑えられなくなる。」


淡々としているようで、切羽詰まったような声音。


「家に閉じ込めて、身の回りの世話は全て俺がして、誰にも夏空様の声を聞かせたくない。…そうじゃないと、安心、できなくなる」

「っ、そ、んな…」

「それは嫌でしょう?」


全てわかった上で、彼は諦めたように笑みを零した。

それから、瞼を伏せ、少し腰を屈めた。


「――……」


幼い頃、よくしていたように額同士が触れる。
お互いの吐息が重なり、離れていった。


「好きです…夏空様」


吐き出されるその言葉はオレが望んでいたもののはずなのに、…声に、表情に含まれる別の暗い”何か”によって歓喜の気持ちは湧き上がらなかった。


「…俺が怖い、ですか」

「っ、」


彼の顔に、僅かに怯えの感情が滲んだのがみてとれた。
応えられないオレに対し、困ったような表情で、泣きそうに笑う。


「最低で、醜悪で、…自分勝手で、本当にどうしようもない」

「……」

「…それでも俺は、貴方がいなければ生きていけないんです」


そして、そっと頬に冷たく優しい手が触れた。

ふわ、と風が吹くような…酷く心地の良い感覚が身体を満たし、意識がまた遠ざかるのを感じる。

「…な、に…」眠気に襲われながら、とぎれとぎれに発した言葉を最後に、再び眠りにおちた。
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