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顔をその胸元に寄せ、抱き締め返してくれるのを待つ。

他全部を失い、何もかもを諦めても欲しいと焦がれてしまうほどの整った美しい容姿と体形。

女の子が望むものを全て持っている世界で唯一の男の人。

(ああ、私の手の中に戻ってきた)

彼も、私を待っていてくれた。
だからこそ、こうして再会することができたに違いない。

この瞬間を、どれほど待ち望んでいたことか。

あの日以来眠れなかった。
食事もまともにとれなかった。

全部の身体の機能がそれしか考えられないというくらいに、ずっと、ずぅーーっと一秒たりとも、咲人のことばかりを想わない瞬間はなかった。

……けれど、いくら待っても私の背中に回される腕はない。


「何か用ですか」

「…ぇ、…っ、?」


高くもなく低くもなく、耳に心地よい彼の声。

頭のすぐ傍で零された声に、目を瞬く。

それから上を見上げ、愛しい彼の整った顔に、……かなり近い距離で愛しい人と視線が交わったことに背中がゾクリとし、全身が、手先が震えた。


(…好き…やっぱり、咲人のことが、他のこと全部どうでも良くなるぐらい好き…)


「夏空様が家で待っていらっしゃるので、要件があるなら手短にお願いします」

「…っ、…ねぇ、咲人、どうしちゃったの、?」


恋人のような甘い雰囲気などない。

興味なさげな態度。
それでも、その表情でさえ美しく見惚れてしまうのは、もう取り返しがつかないほど彼に溺れてしまっているからだろう。

けど、咲人はそんな私に構わずに面倒臭そうに息を吐き、「急いでいるので」と背を向けて去ろうとする。


「待ってよ…!!あの時、どうして私がやったって言ったの?」

「……」

「私は傷なんてつけてないのに…っ、」


確かに、キスマークを沢山つけたのは私だ。

でも、他は違う。

なのに、咲人は私がそれをやったって言った。
どうして。どうしてそんな嘘を言うの。

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