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自分で無自覚にしてたことをありありとそんなふうに語られて恥ずかしすぎる。

若干涙を浮かべて抗議すると、また嬉しそうに笑った。


「それで、先程のお話ですが、…どなたがそのようなことを?」

「…え、正孝が、」


言った瞬間に、しまったと思った。


「……また、アレですか」


答えた途端、前のように優しい笑みを浮かべたまま…その表情が何か暗いものにかわる。
ぞくっと寒気が再びおそってくる。


(正孝の話をするといつもこうなんだよなー…)


なんでだろう。
会うたびに二人はいつもばちばち見えない火花を散らしながら喧嘩してるし。


(…オレ、余計なことを言っただろうか)


だけど気になるものは気になるし、…聞いて誰から聞いたかを答えなかったら答えなかったでさっくんに長ーい時間お仕置きされるのは目に見えてる。

それに、正孝には今の話を誰から聞いたと言ってもいいと言われた。
むしろ言えぐらいの勢いだった。

でも、オレのせいで二人の仲が悪くなるのは…嫌だ。


「…ま、正孝は悪くないぞ」

「……」


くいくいと服を引っ張って一応言ってみるけど、…あまり効果はないような気がした。
オレを膝の上に乗せているさっくんが、観念したようにはぁと息を吐き、スプーンをお皿の上に置く。

それから、不安げにその動きを目で追っていたオレの身体を向き合う体勢に変えた。
服の裾を掴んでいた手を取られ、指の隙間に指を差しこんできゅ、って繋いでくる。ちょっとくすぐったい。


「夏空様」

「…ん?」


さっくんのその、長い睫毛の影になってる…静かで綺麗な瞳にそうやって見つめられると、なんだか心の中まで見透かれてるような気分になる。
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