7(桃井ver)

***


昔から、何でも手に入らないものはなかった。


「…っ、は、はぁン…ッ、咲人、…っ、さくと…、さまぁっ、」


股が隙間なくぴったりと密着したまま、ジンと痺れる脳内で、ずっと欲している愛しい名を呼ぶ。呼べば呼ぶほど下腹部がキュンとして、濡れた。

彼が私を抱き締め、腰を打ち付け、幾度も亀頭で子宮を押しつぶすようにピストンする度に、恥部の隙間から行き場を失った愛液が下品な音を立てて溢れ出す。

ギシギシとベッドが軋んだ。


「はァ…ッ、!すげえナカびちゃびちゃ。はは、お前ここ好きだよな…っ!」

「んあぁっ、!ぁンンッ……」


意気揚々と突き挿れられ、のけ反る。

けど、内心では『煩い』と叫んで舌打ちしたくなった。


(…せっかく咲人様だと必死に思いこもうとしてたのに)


溝ガエルみたいな汚い声を出されたら、顔を見えない体位でしている意味がない。

それでも一般的に顔は良いって言われてるから、まだマシかなーと思って彼氏に選んであげたのに。

これじゃあ台無しだ。

顔さえ使えなくなったら、何のために付き合っているのかわからない。


(ああ、やっぱりこの男じゃだめ。咲人様じゃないと、咲人がいい…)


代わりにすらなれない。
今までの人生で、初めて全てを忘れて見惚れた、ただ一人の人。


『――桃井さん、』


忘れられない。
あの声を、あの瞳を、あの瞬間を。

彼を見た瞬間、目が合った瞬間、周りから音が消えた。

心を揺さぶる程綺麗で艶かしく、白く透き通った美しい顔。

甘く優しい笑顔に、スーツがとても良く似合ってて、色気のある大人の男。

……あの時、きっと私は生まれて初めて恋をした。

こんな陳腐な言葉じゃ表現できない。それぐらいに、…正に理想、いや、理想以上だった。

それに、あのときだけじゃない。

その後も保健室で白衣を着ている彼を目にして、優しく微笑まれて、手当てしてもらって、何度も、何度も数えきれないほど恋をした。

……今まで恋だと思ってたのは、全部間違いだったのだと思い知らされた。

だって、恋って発狂するぐらい頭がその人で満たされることだもん。

これまでの「好き」とは全然違う。

今みたいに発情した身体を持て余すこともなければ、強い嫉妬心や独占欲が胸を占領することもなかった。

…どんな風に、抱いてくれるのかな。

普段であれなら、セックスの時なんてきっと想像もできないくらいに素敵な彼をみることができるはずだ。

目を閉じて思い描いていたら、それだけで子宮がキュンキュンして、感度が良くなった。ピストンの速度が上がる。

身体の上から下までを大量の汁で濡らし、それらを混ぜ合い、汗ばんだ肌を溶け合わせながら絶頂に打ち震える。


(…雨宮先生、…ううん、咲人、…様…)


何度も先生って呼ぶようにって言われたけど、絶対にそう呼ぶのは嫌だった。

そもそも、他の汗臭いおじさん達と一緒の呼び方なんて失礼だ。

どう考えても『先生』より、『様』の方が彼に相応しいし、皆にも咲人が自分らとは格が違うのだと意識付けられる。

それに、毎回本人にも様付けで呼ぶのは、彼の困った顔がみたいからだった。

先生って呼んでもいいけど、それだと他と同じくらいしか構ってくれなくなる。

……でも、もうそんな駆け引きも終わり。

すぐにそういう他人行儀な関係ではなくなるんだもの。


「さく、と、…っ、はぁ…ッ、ぁあんっ、さく、とぉ…っ、すき、すきぃ…っ」


シーツを掴み、喘ぎ、ヨガる。
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