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あとちょっと出会うのが早ければ、本当の処女を貰ってもらえたんだろうと思うと…それだけが少し悔しい。

けれど、今更それはどうでもいいことだ。
うん。嘆いたって仕方がない。

だって、それは”何とかできる”から。

それより、


(…早く抱かれたい。こんな下男では足りない)


…そう思った瞬間、…あ、だめだと思った。

すうっと熱が引く。

完全に冷めてしまった。

まだ律動は続いているのに、気が削がれる。

咲人だと思っていたから気持ち良いと感じられていたのに、もうそんな気分にすらなれない。

はぁと息を吐く。

行為が終わっても、気持ちは隣に寝そべっている男ではなく、…『彼』に奪われ続けていた。


「咲人って、前死んでもいいくらい好きって言ってたやつか?」

「そう。普通の人間じゃ比にならないくらい格好良くて優しいの。あ、勿論アンタは普通の人間ね」

「…うわぁ、俺も皆にイケメンって言われてるんだぜ?それにさ、彼氏に対してよく平気で他の男の話できるよな。ありえねえわ、マジ」

「キープに気を遣う意味ないでしょ。それと咲人を呼び捨てにするのもやめて。苛々するから」

「呼び方まで言われんのかよ。今散々俺を使ってたわりに扱いひでえー」


(…あと一週間後にはキープですらなくなるけれど)

ゲラゲラと笑う男に、別段傷ついた様子はない。

どうだろう。もしかしたらみせてないだけでちょっとくらいは何か感じてるのかも。

まだ私のこと凄い好きみたいだし。

多分その理由は、私が他と比べて胸も大きいし、顔もかなり可愛いから。

だから、ママもパパも私にすごーく甘いし、男は当然としても、女子の友達だってそれは例外じゃない。

可愛いのに性格も良いって、皆がちやほやしてくれる。


「一週間後、私誕生日なんだ」


とっても楽しみ。
珍しくご機嫌に笑う私に、男が髪を撫でてくる。


「祝ってほしいのか?」


…前は格好いいって思ってたけど、咲人に比べたら不細工すぎて目も当てられない。


『よくそんな泥みたいな顔で私に触れるよね。』


そう言いたいのを堪えて、「いらない」と答えた。


(…だって、)


既にほとんど用済みのアンタに使う時間はないのよ。


「咲人に祝ってもらうから」

「…マジか。オッケー貰えたんだ」


まだだけど、嫌とは言わせない。
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