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「……………なんだよ、ばか……」


その話題は、さっくんがいなくなってからも熱を冷ますことはなかった。
…すぐに執事にしたって話すかと思ったのに桃井にそういう気配は全くない。


(……別に、皆に言う気はない…のかな)


…授業を休んでる間、”桃井は体調を崩してたから、保健室でずっとさっくんに介抱してもらっていた”らしい。


(…疑うのって、良くないと思う、けど、)


…朝の桃井は、特に体調が悪そうには見えなかった。

もしかしたら、オレが気づいてなかっただけかもしれない。

……それでも、…本当にその理由で、今までずっといなかったのかと怪しんでしまう。

しかも桃井の話では、さっくんは今、いつも通りに保健室の先生として勤務をしているらしい。

…休むんじゃなかったのか。

(……桃井がそうするように言ったのか…?)

それとも、体調の悪い桃井の傍にいれるように、さっくんがそれを望んだ…?


「ねぇさっきの何?!どういうこと?!なんで咲人様と一緒にっ」

「しかも頭撫でてた?!いくら香織のことを心配してるっていっても、夏空くん以外にあそこまでしてるの初めて見たよ!」

「…ていうかさ、ただならぬ雰囲気は何!?もしかしてそういう関係なの?…もー香織ってば何でもないってそればっかりじゃん!めっちゃ気になるんだけど!?」


休み時間の度に何度も桃井の周りに沢山のひとが集まった。

…授業が終わった直後、…今もキャーキャー耳が破れるような大きさで騒いでる。


「違うよー?本当に何でもないの。ただ…ちょっと、ね」

「えー、ちょっとって何?!何?!気になるんだけど!本当はなんかあったんじゃないの?!教えてよー!」


含みのある言い方でごまかすように笑って手を振る桃井に、余計に人が群がる。


「……?」


…なんでさっくんを執事にしたって言わないんだろうと首を捻った。

あれだけ人が集まってきたら嫌になりそうなものなのに、桃井は全然疲れてる感じがなくて、むしろ嬉しそうだ。


「……っ、」


そんな様子を見ていられなくて、ふいと顔を背け、瞼を軽く伏せる。

…なぜか喉の奥が狭くて、呼吸がしづらいような気がする。
咳が出そうになるのを我慢するため、意識をそらす。
普段通りの表情を装いながら頬杖をつき、目の前の文庫本の文字に集中することにした。

………

………………


――そして、その次の授業で。

皆の騒ぎが、一層大きくなるような出来事が起こった。
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