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「…ほ、んと…に…?」


掠れて落ちた言葉は自分にさえ聞こえない。

するの?
嘘じゃないの?

ほんとに…キスするの?

不安と恐怖と絶望で、喉が締まる。
首まで心臓が飛び上がったように息苦しい。

優さんの肩に手を置いた女の人が、少し背伸びをする。

目の前で、近づく二人の距離。


「…めて、」


やだ。
しないで。
しないでしないでしないでしないで。

キスなんか、しないで。

…夢を、見ているんだと信じたかった。

睫毛を軽く伏せている優さんの整った横顔に、躊躇は一切見えない。

本当に、してしまう。

このままだと、
いつも、俺にだけ見せてくれるその表情が、簡単に あっけなく晒されて、

それを こんな目の前で、


「…っ、ぅ、あ、あ゛…」


優さんは、簡単にできちゃうんだ。

俺がすぐ傍にいるのに。
嫌だって、こんなに言ってるのに。

…俺をいないものみたいに扱って、


「…もう、いい…」


塩味の雫をとめどなく頬に伝わせながら、嗤う。
全部、どうでもいい。

優さんがしたいなら、すればいい。

俺だって、散々他の人とそういう行為をしてるんだから。
彼が望むなら、好きにすればいい。


「――…」


諦めに似た気持ちで、瞳に映す。

”好きだよ”って言ってキスしてくれた彼を、

”流羽にだけ、特別”って抱き締めてくれた彼を、


……追いかけるのはこれで最後にしよう。
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