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「…っ、しないで、きす、嫌だ、いやだ…っ、…っ!!」
「…何、すんのよ。しないで、って、そうするって言われたのにイッたんでしょ?ほら、ごねてないで離れ…」
「…っ、ぅ゛、ぁ、ぁ、やだ、やだ…ゆう゛さん…っ、お願い、やだ、ゆうさん、がキスするなんて、いやだぁ゛…っ、!!」
子どもより酷い嗚咽だった。
醜いだだっこ。癇癪。最低。みっともない。
…これで完璧に嫌われた。
きっと優さんも、こんな俺の姿を失望の色を隠せない瞳で見下ろしている。
最初にそうするって言われたのに、俺がイっちゃったから、
…正樹にイかされたのは事実だから、俺に嫌だと言う資格はない。
でも、それでも、
愛しい身体に抱き付いたまま、何度も何度も首を横に振る。
信じられない、と感情を露わにする女の人の言葉に返す余裕なんかなかった。
…離れたら、またあの場面を見ることになる。
二人が、キスすることになる。
「いい加減にしてくれないかな?」
ただひたすらに優さんから離れることを拒む俺に、明らかに女の人が苛立ったのがわかった。
「…そもそも、優の恋人とか言っちゃってるけど、それって勘違いストーカーってやつじゃない?」
「っ、」
邪魔をされた不快感とバカにした笑いを滲ませた声。
ドク、と心臓が脈打ち、冷える。
「正樹に挿れられて一回どころか何回もイッてたじゃん。男ならだれでもいいんでしょ。尻軽のくせに、ごちゃごちゃ言わないでよ」
「…ッ、!…しり、がる…、…」
露骨な中傷の刃に、優さんに抱き付いている手がびくりと震えた。
脳裏を駆け巡る過去が、言い返すことを許さない。
優さんの『恋人』になれた頃から、するようになったこと。
俺を犯す数えきれない程多くの人の発情した顔。映像。
性的な興奮。粘ついた目つき。息遣い。
玩具を扱うような無数の四肢と愛撫。
緊張で震え、強張る身体を乱暴に強淫する肉体。行為。匂い。性器。精液。
「ぁ゛、…あ…っ、」
剥き出しにされた現実に、喉の奥で息ができなくなる。
「そうでしょ?違うって言えるの?」
「ッ、で…も、おれ゛、おれ゛、は、」
したくなかった。優さん以外となんて、何があってもしたくなかった。
…なんて言い訳でしかない。
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