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…届くはずがない。
優さんが俺の手を取ってくれるはずがない。

のに、


「可愛いのはわかるけど、あんまり流羽をいじめないで」


柔らかい彼の声が、鼓膜を揺らす。


「…っ、」


伸ばした右手。

五本の指の間にするりと差し込まれた指に、…絡め合うように繋がれた手に、涙が溢れた。
俺より少しだけ大きくて、綺麗な手の感触。

…困ったように笑って、少しだけ泣きそうな顔をしている彼の微笑みが、狂おしいほどに胸を焦がす。

その大好きな優さんの表情がいつにも増して優しくて、心臓がぎゅぅぅううって信じられないくらいに痛くなる。


「…っ、好き、俺、ゆう、さ゛ん゛…っ、が、…、」


好き。
好き。
好き。

嗚咽に塗れて言葉にならない。

重なった手のひらに安堵し、肌を密着し、擦り合わせるように触れながら、ぎゅって俺からも握り返した。

何度も何度も伝える。


「…っ、…すき、です…」


貴方のことが好きです。
好きです。大好きです。

どれだけ嫌なことをされてもやっぱり好きなのは変わらなくて。
こうして少しでも触れてくれるだけで、俺を見てくれるだけで、もう全部許しちゃってもいいやって気になるんです。

指と指をこすり合わせ、繋いだ手に祈るように想いを紡いだ。


「…そこまで想ってもらえるようなことをした覚えはないんだけどな」


「なんで、そんなに俺のこと好きなの?」と、零された疑問に、ふるふると首を振る。


「わか、らない、…っ、けど、おれは、もう、他の人じゃ、だめで、優さんいがいを、好きになれなぐ、て…っ、りゆ、う、なんて、…っ、」


答えがあるのなら、理由があるのなら、俺の方が教えてほしい。
そうすれば、ここまで苦しまずには済むのかもしれないのに。

濁流のような粒が熱い目から零れていき、泣きすぎてひりひりする頬を流れ落ちる。


「どうしたら、俺を嫌いになるのかな」

「…っ、なれる、気がしな…っ、」

「ふ、…もう、泣きすぎて顔ぐちゃぐちゃ」


頬を落ちる涙を、優しく彼の指先が拭ってくれる。
そこに触れる手さえ愛しくて、すべてを忘れて縋りたくなった。

不意に笑みを零し、持て余したような、何とも言葉で形容しがたい表情を浮かべている彼に、こんな状況でも好きだと思う気持ちが止まらなくなる。

理由なんてない。
明確なきっかけがあればまだ違ったかもしれない。
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