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何気ない会話の最中だったから、?、?と戸惑い、しかも滅茶苦茶ドキドキする。
密着した身体から、息遣いとか、体温とか、色々伝わってきて、「ゆ、優さん、え、ど、どうしたの?」って凄いどもった。
「た、多分まだ髪濡れてるし、そのままだと優さんも濡れちゃうか、」
「…ごめん」
俺の肩に頭を寄せるようにして、ぽつりと零された真剣な声。
ドキ、と先程とは違う意味で心臓が脈打ち、「え、…な、何、」ちょっと笑ってこの重い空気を和らげようとする。
けど、もう一度…小さく謝った身体はほんの少しだけ震えているように感じて、決して冗談では通じないような、弱々しい態度で。
きっと、彼が言っているのは、正樹のことなんだろう。
…謝るくらいなら、しなければいい。
(…狡いよなぁ…)
許したくないのに、そうやって許しを乞おうとしてくるのは酷いと思う。
俺が、優さんを責められないのを知ってるくせに。
俺は、彼が俺だけを見てくれて、そうしてくれれば、それで満足なのに。
「…っ、…ぅ、」
それでも、今抱き締めてもらえているこの瞬間が、何よりうれしくて、手放したくなくて、
こんな俺を必要としてくれることが嬉しくて、ずっとこうしててほしいと願ってしまう。
そう考えてしまう自分に、ばかだなぁ…と熱い涙をのみ込んで笑った。
…何度も、思う。
あの日、深夜の駅のホームで、優さんと会わなかったら今頃どうなっていたのかなって。
普通に彼女がいて、ドキドキしながら当たり前みたいに楽しい日々を送って過ごしてたのかなって。
「…俺は、優さんが傍にいてくれれば、それだけで充分だよ」
飲み込んだ言葉に滲んだ感情は、多分、嘘だった。
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きっと、俺達はどうやっても幸せになんかなれなくて。