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それは、確かに、聞きなれた俺の愛しい人の声で

(まさか…)

背筋に恐ろしいほどの寒気と戦慄が走る。
嫌だ。嫌だ。嫌だ。


「…っ、やめ…ッ、やめてくれ…っ!!」


泣いてやめてくださいお願いしますとその腕を掴んで縋れば、ハルは思い通りになったことに機嫌を良くして、にやりと口の端を持ち上げた。
今はそんなことに嫌悪感を抱く余裕もない。
一瞬でも、一秒でも、奏斗さんを早く解放してもらわないと、ハルの言う通りにしないと、奏斗さんが死ぬ。
恐怖で涙を零す俺の頬をぺろりと赤い舌で舐めて、彼はもう一度ゆっくり繰り返した。


「ほら、言ってみろ。俺のことが好きだって」

「…っ、ぁ゛う…ッ、すき…っ、ハルのことが、好きだ…ッ」


言いたくもない台詞を、口から吐き出す。
何度もイかされたせいで掠れてしまった声を絞り出すように、甘い言葉とは反対に恨みを込めて吐き捨てた。

オレが一番最初にこの言葉を伝えたかったのは、奏斗さんだったのに。
こんな奴じゃなくて、奏斗さんだったはずなのに。

もうやけくそだった。

どうして好きでもない、むしろ大嫌いな相手にこんなことを言わなければいけないんだ。


「…っ、ぅ…」


目尻から零れる涙は快感からか、哀絶からかわからない。…でも絶対に後者に決まってる。
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