Weil du nur einen hast.
(だって君には一つしかない)
※三輪くんが若干髪フェチ気味
※2人とも若干病んでる
高嶺の花、だと周りは言う。日本語で手の届かない憧れの対象を言うらしい。
自分ではそんなつもりはない。だが確かに同性の友人はこのクラスだと光くらいだ。同性に限らないとしても、ボーダー関係者以外の同級生はどこか私達を遠巻きに見ている。
では私はどうだろうか。
周りが私達を切り離して見ているように、自分は周りを切り離して見ていないか。
見ていないと言えば、きっと私は空閑くんにつまらない嘘をつくね、と言われるだろう。
その通り、かもしれない。私はある意味で盲目だ。
私を満たせるのは、ひとりしかいない。
その人を満たせるのも、今は私しかいない。その人の大好きだった人はいなくなってしまったらしい。
時々想いを寄せられることがあるが、それらの想いは全て振っている。
その度に『私にはひとりしかいないから、誰が想いを私に寄せようが間違いなく振る』、それがわからないのか、と少し呆れてしまう。
今日もそう。言われて振って、それだけ。
携帯のメッセージアプリを立ち上げ、その旨を書く。彼――秀くんの方もそこそこ人気があるので想いを寄せられることがあり、その度互いに報告しあっている。
「『じゃあ後でそちらの作戦室に行くわね』…っと!」
***
級友でもあるので、今日自分の学級で授業が長引いたので遅れた、などということはない。だが今日は少しだけ秀くんの方が早めに来ていたらしい。元々彼に隊長を務める隊の作戦室だから、ということもあるかもしれない。
「早織、断ってきたんだろうな、」
「当たり前でしょう。私を満たすのが貴方以外の誰だというの?」
「…さあな。もしいたらそいつを許さないと思うが」
「で、貴方はどうなのよ?」
「早織と同じだ、」
互いに、あくまでも振ったことが前提である。
「…来い」
和室の角、秀くんの目の前に座る。
そうして抱きすくめられる。私は彼に縋ることしかできない。
しばらくしてツインテールを結んでいるゴムに、手がかかる。その手はすぐにゴムを取り去り、固定する術を失った髪が下りる。
「擽ったい、」
「今更言うのか、早織。いつものことだろうに、」
――そう、これ自体はいつものことだ。
というよりは、私達の間での合図と化している。解くのも結うのも秀くんに託されている。
固定していたゴムの片方は私の左手首に、もう片方は彼の右手首につけられる。
「痛かったら言ってくれ、」
「手首のこと?…今は大丈夫よ」
「…ならいい、」
手首を掴まれ、引き寄せられる。
「こうしていると早織を縛り付けているように感じるな、」
確かにこのゴムは両方とも秀くんに与えられたものだ。
今手首につけているのは片方ずつとはいえ、アクセサリーそのものに枷の意味が含まれているとされることもあるので、縛り付けているという表現はあながち間違ってはいない。
「早織、苦しいか、」
「…何でも、」
声だけで、びりびりと痺れるような感覚がする。
秀くんは縛り付けられて苦しいかと問い質したいのだろう。それ自体は、苦しくはない。けれど、手首にゴムを巻かれた後、一層感覚に意識が向いてしまっている。
「何でもないとは思えんが…どうした」
秀くんはそれに気づいたらしく、少し冷たい手で私の頬に触れる。
それが私を一層痺れさせるのを、知ってか知らずか。
「大丈夫か、」
「ええ、」
顎に手を添えられ、見上げる。
彼の眼に映る私の目の焦点は、合っていない。
「…まだ何もしていないのだがな、」
私がこれから何をされるかはわかっている。けれど…
「早織、」
まだ私に言いたいことがあったのか。
「…何よ?」
「知ってるんだからな、お前が隠してるぐちゃぐちゃでどろどろしたところ、」
秀くんは私の全てを知っているんだろう。
光が。雄太が。
辰也さんが。鋼さんが。太一くんが。結花さんが。
私の両親が。
そして私自身が知らないことまで――彼は知っているのかもしれない。
きっとそれは私の裏側。
心の奥の方。
人に見せてはいけない感情。
「周りは早織の表側しか、綺麗なところしか知らないだろうけどな、」
「…だから、何だと言うの?」
「でもそれでいいんだ、他の誰かには見せないでくれ、」
そう言われたところでガチャリ、と扉が開いた。
誰かが来たのだろうか?
***
米屋を呼ぶ為、彼の隊の作戦室へ向かう。
扉を何回かノックする。だが、いくらノックしても彼は出てこない。
諦めた俺は返事を待たずに扉を開ける。
その先の光景に、思わず息を呑んでしまった。
そこには何故か三川がいた。
自分も彼女に片思いしていたけれど、あいつ、三輪の彼女だったのか。
ボーダーではたまに顔を合わせているし、学校でも何度か告白を振っている姿は見たことがあるが、彼女の『ただひとりの相手』が誰かまではわからなかった。
だが、今のような彼女は見たことがない。おそらくずっと三輪の前でしか見せてこなかったのだろう。
「…出水か」
俺の存在に気づいたらしく、三輪が俺を制止にかかる。
「どうしたの、」
「早織、しばらく後ろを向くな、」
三川も気づいたらしいが、後頭部を押さえられているせいか、こちらを見てはくれない。
「おい出水、何しに来た」
「いや…米屋を呼びに」
「陽介なら個人ランク戦ブースに入り浸っているぞ。行ってきたらどうだ」
そうしたいのは山々だが、足がすくんで、この場所を出るに出られない。彼女の危うさにどうしようもなく惹きつけられてしまうのだ。
頭の中では、飲み込まれてはいけないと警鐘が鳴っているのに。
「お前は早織を見ているのか?」
「まあな…惹きつけられるんだよな、あいつ」
「…他の誰にも渡しはしないと、わかっているんだろうな?」
まるで近界民や、迅さんに向けたような声。
俺がそのような明確な敵意を向けられたことはなく、背筋が凍ってしまう。
「なあ、三川はどうなんだよ?」
「…知ってるでしょ?私には秀くんしかいないの」
三川も同じようなことを返す。
――ああ、駄目だな。逃げれないな。
そう直感した時には、既に俺の膝から下が床についていた。
←Zurueck/Naechster→
←Zurueck.※三輪くんが若干髪フェチ気味
※2人とも若干病んでる
高嶺の花、だと周りは言う。日本語で手の届かない憧れの対象を言うらしい。
自分ではそんなつもりはない。だが確かに同性の友人はこのクラスだと光くらいだ。同性に限らないとしても、ボーダー関係者以外の同級生はどこか私達を遠巻きに見ている。
では私はどうだろうか。
周りが私達を切り離して見ているように、自分は周りを切り離して見ていないか。
見ていないと言えば、きっと私は空閑くんにつまらない嘘をつくね、と言われるだろう。
その通り、かもしれない。私はある意味で盲目だ。
私を満たせるのは、ひとりしかいない。
その人を満たせるのも、今は私しかいない。その人の大好きだった人はいなくなってしまったらしい。
時々想いを寄せられることがあるが、それらの想いは全て振っている。
その度に『私にはひとりしかいないから、誰が想いを私に寄せようが間違いなく振る』、それがわからないのか、と少し呆れてしまう。
今日もそう。言われて振って、それだけ。
携帯のメッセージアプリを立ち上げ、その旨を書く。彼――秀くんの方もそこそこ人気があるので想いを寄せられることがあり、その度互いに報告しあっている。
「『じゃあ後でそちらの作戦室に行くわね』…っと!」
***
級友でもあるので、今日自分の学級で授業が長引いたので遅れた、などということはない。だが今日は少しだけ秀くんの方が早めに来ていたらしい。元々彼に隊長を務める隊の作戦室だから、ということもあるかもしれない。
「早織、断ってきたんだろうな、」
「当たり前でしょう。私を満たすのが貴方以外の誰だというの?」
「…さあな。もしいたらそいつを許さないと思うが」
「で、貴方はどうなのよ?」
「早織と同じだ、」
互いに、あくまでも振ったことが前提である。
「…来い」
和室の角、秀くんの目の前に座る。
そうして抱きすくめられる。私は彼に縋ることしかできない。
しばらくしてツインテールを結んでいるゴムに、手がかかる。その手はすぐにゴムを取り去り、固定する術を失った髪が下りる。
「擽ったい、」
「今更言うのか、早織。いつものことだろうに、」
――そう、これ自体はいつものことだ。
というよりは、私達の間での合図と化している。解くのも結うのも秀くんに託されている。
固定していたゴムの片方は私の左手首に、もう片方は彼の右手首につけられる。
「痛かったら言ってくれ、」
「手首のこと?…今は大丈夫よ」
「…ならいい、」
手首を掴まれ、引き寄せられる。
「こうしていると早織を縛り付けているように感じるな、」
確かにこのゴムは両方とも秀くんに与えられたものだ。
今手首につけているのは片方ずつとはいえ、アクセサリーそのものに枷の意味が含まれているとされることもあるので、縛り付けているという表現はあながち間違ってはいない。
「早織、苦しいか、」
「…何でも、」
声だけで、びりびりと痺れるような感覚がする。
秀くんは縛り付けられて苦しいかと問い質したいのだろう。それ自体は、苦しくはない。けれど、手首にゴムを巻かれた後、一層感覚に意識が向いてしまっている。
「何でもないとは思えんが…どうした」
秀くんはそれに気づいたらしく、少し冷たい手で私の頬に触れる。
それが私を一層痺れさせるのを、知ってか知らずか。
「大丈夫か、」
「ええ、」
顎に手を添えられ、見上げる。
彼の眼に映る私の目の焦点は、合っていない。
「…まだ何もしていないのだがな、」
私がこれから何をされるかはわかっている。けれど…
「早織、」
まだ私に言いたいことがあったのか。
「…何よ?」
「知ってるんだからな、お前が隠してるぐちゃぐちゃでどろどろしたところ、」
秀くんは私の全てを知っているんだろう。
光が。雄太が。
辰也さんが。鋼さんが。太一くんが。結花さんが。
私の両親が。
そして私自身が知らないことまで――彼は知っているのかもしれない。
きっとそれは私の裏側。
心の奥の方。
人に見せてはいけない感情。
「周りは早織の表側しか、綺麗なところしか知らないだろうけどな、」
「…だから、何だと言うの?」
「でもそれでいいんだ、他の誰かには見せないでくれ、」
そう言われたところでガチャリ、と扉が開いた。
誰かが来たのだろうか?
***
米屋を呼ぶ為、彼の隊の作戦室へ向かう。
扉を何回かノックする。だが、いくらノックしても彼は出てこない。
諦めた俺は返事を待たずに扉を開ける。
その先の光景に、思わず息を呑んでしまった。
そこには何故か三川がいた。
自分も彼女に片思いしていたけれど、あいつ、三輪の彼女だったのか。
ボーダーではたまに顔を合わせているし、学校でも何度か告白を振っている姿は見たことがあるが、彼女の『ただひとりの相手』が誰かまではわからなかった。
だが、今のような彼女は見たことがない。おそらくずっと三輪の前でしか見せてこなかったのだろう。
「…出水か」
俺の存在に気づいたらしく、三輪が俺を制止にかかる。
「どうしたの、」
「早織、しばらく後ろを向くな、」
三川も気づいたらしいが、後頭部を押さえられているせいか、こちらを見てはくれない。
「おい出水、何しに来た」
「いや…米屋を呼びに」
「陽介なら個人ランク戦ブースに入り浸っているぞ。行ってきたらどうだ」
そうしたいのは山々だが、足がすくんで、この場所を出るに出られない。彼女の危うさにどうしようもなく惹きつけられてしまうのだ。
頭の中では、飲み込まれてはいけないと警鐘が鳴っているのに。
「お前は早織を見ているのか?」
「まあな…惹きつけられるんだよな、あいつ」
「…他の誰にも渡しはしないと、わかっているんだろうな?」
まるで近界民や、迅さんに向けたような声。
俺がそのような明確な敵意を向けられたことはなく、背筋が凍ってしまう。
「なあ、三川はどうなんだよ?」
「…知ってるでしょ?私には秀くんしかいないの」
三川も同じようなことを返す。
――ああ、駄目だな。逃げれないな。
そう直感した時には、既に俺の膝から下が床についていた。
←Zurueck/Naechster→