宝石
タンザナイト
「嘘だろ……あの兄ちゃんが?」
アニメやラノベを愛し、三次元の恋愛とは縁遠いと思っていた兄に、恋人ができた。その**さんは萬屋ヤマダの客で、兄は店で困っている彼女を見捨てられず助けた結果好意を抱かれ、それを断りもせず受け入れた――というわけだ。
もちろん兄は**さんと付き合うに値する素晴らしい人物であることも、俺の手は彼女には絶対に届かないことも、俺が一番わかっている。そもそも女の子と何を話せばいいかわからない俺には、彼女に声をかけることすら叶わない。
けれど兄の側で輝く**さんを見ていると、どうしても手を伸ばしたくなってしまう俺もいて。
「祝福しようと思ったけど、よりにもよってあの人かよ……っ」
誰にも言えない感情だけが、ぐるぐると渦巻いていく。
兄本人に言うわけにもいかず、三郎に言うのもどこか気が引ける。それに俺はイケブクロの顔役だから、街の奴らに言ったらすぐに広まってしまう。
「なあ……どうすりゃいいんだよ……!」
――心を占めるのは尊敬か。それとも羨望か。
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