宝石
ラピスラズリ
まだ手放せない左手の薬指の指輪を見るたびに、くるしいと思うようになったのはいつからだろう。夫はもうこの世にはいないというのに、私はいつまで縛りつけられているのだろう。
「どうしよう。新しい旦那さん見つける?でも……」
夫を裏切るわけにはいかず、けれど寂しさを持て余しているのも事実で。ふと、スマートフォンに夫の葬儀を担当してくれた社員である松川さんの電話番号が入っていたのを思い出す。
「もしもし。こちらの番号であっていますでしょうか?」
『はい、松川です。……あ、**さんですよね。何かございましたか?』
「あのですね、実は……」
個人的な悩みを話してもいいのだろうかと戸惑いつつ、全てを話してみる。彼は自分ならそんな思いさせないのにと前置きしてから、こう続けた。
『……もう一度、ただの**に戻ってみればいいんじゃないですか?』
それを最後に電話は切れ、代わりに彼の待つホテルの場所が送られてきた。
ねえ、貴方――今夜だけは、間違えてもいいですか?
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