宝石

サファイア


そろそろ、予約していた飛行機が来る時間だ。
旅行じゃない。少々ボーダーから離れるだけ。このまま、どこかへ逃げてしまいたい、だけ。
周りには進路の都合と説明したけどそんな都合はないし、ボーダーの任務が嫌いになったわけでもない。もし空閑くんが説明を聞いていたら、つまんない嘘ばかりつくねとか言うんだろう。それでもよかった。
「……好き『でした』よ、二宮さん、」
好意を抱いていたからこそ、未だに鳩原さんばかり映している瞳を見るのがつらかった。彼はB級1位の隊を率いる実力者だから、私がボーダーにいる限り嫌でもこの名前が耳に入ってきてしまう。
――なんだ。結局、私も彼も似た者同士じゃないか。
私も彼も、やりきれない何かを引きずっているだけじゃないか。
「なんで忘れられないかな、私……」
外では冷たい雨が降る。けれど、それも向こうに着く頃には上がるんだろう。
私の心も、そんな風に簡単に晴れればよかったのに。

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