宝石
シトリン
『では、さようなら。少しだけど世話になったわね』
僕の好きだったあの人は、あの日を境に僕達の敵になった。
追いかけたって、取り戻せる保証なんてない。そうわかっていても、目も手も脚も彼女を探し出して止まらない。
全く、僕はいつまで過去に執着しているんだか。
そうして見つけた先輩は、向こうに行っても何も変わっていなかった。
「あら、敦くんじゃないの。久しぶりね」
僕への優しい眼差しも言葉も、今までと同じ。纏う香りも、探偵社のデスク前に微かに漂う残り香と同じ。
今までと違うのは、彼女と僕の居場所の違いだけ。
「どうしてこんなところまで追ってくるのよ。もう私はポートマフィアの人間なのよ?」
「理由……ですか」
ここまで追ってきた理由。そんなの、一つしかないじゃないか。
「先輩にまた会いたかったんです。それだけじゃ、だめなんですか?」
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