03
まもりて
「いや〜、今回も最高だったな」
「あんたさあ……ほんとあのシリーズ好きだよね」
大好きなアクション映画のシリーズ最新作を見に、彼女である**と隣町の映画館に行った帰り。
別の映画を見ていた彼女と肩を並べ、駅に向かう河川敷を歩く。
「三門に戻ったら、かげうらにでも行く?」
「ああ、あそこのお好み焼きは美味いからな。早く食い行こうぜ?」
「ありがと。テツは話が早くて助かるわ」
そのまま歩いていると、途中で犬を連れた男性がこちらに来た。
すれ違った俺に向かって吠えてくるその犬は、あの時右尻を噛んできた小型犬を思い出させる。
「……い、犬……!」
「多分、警戒してるんでしょ」
「それは……それは、わかるんだが、」
「テツが怖がってどうすんの。早く行かないと置いてくよ?」
そのまま怯える俺の手を引いて、**はそのまま歩き続ける。
引き離されるまいと震えながらも彼女に着いていくと、また犬がこちらに向かって吠えてきた。
「おい、待てって、」
「……うん?」
「俺、犬は無理なんだよ……なあ……って、」
驚きのあまりバランスを崩し、そのまま河川敷から川に転がっていく。お気に入りの帽子もその勢いで脱げ落ちてしまった。
**の元に上がろうとしたのも束の間、水音を立てて俺の身体が川に沈む。
「おい、**……っ!」
沈んだのが背面からだったからか息はまだできているし、着ている服で水に浮いてはいるものの、泳げない俺はなかなか水から上がることができない。
――ったく、犬から逃げたかと思ったら次は水かよ。
前門の虎後門の狼とはこのことかと、水の中1人で納得している――と。
「……ちょ、テツ!」
「**……!早く、早く助けに来てくれ……!」
「溺れかけてんじゃん!泳がなくていいからそのまま浮いて待ってて!」
**が河川敷から降りた、かと思えば川に飛び込みそのまま俺の身体に手を回す。俺の体重のせいで手が動かしにくかったらしいが、なんとか岸へと抱え上げてくれた。
暖かい日の光が、俺の濡れた服を乾かしてくれる。
「テツ、大丈夫?ちゃんと息してる?」
「……ああ、ありがとな……っ、」
「いえいえ。それより、あんたが無事でよかったよ」
「はは……また救われちまったか、」
このまま濡れた服で電車に乗るのはまずいからと、服が全て乾ききるまで岸で待っていることにした。それを話せば**は転がり落ちた帽子を取りに行き、すぐに俺の側にしゃがんで届けてくれた。
起き上がってそれを被れば、彼女は何がおかしいのか笑みを溢す。
「……何だよ?」
「考えてみればさ、今の私らってなんか映画みたいじゃん。私がヒーローで、あんたがヒロイン……的な?」
聞けば**が先ほど見た映画に、ヒロインが溺れたところをヒーローに助けてもらうシーンがあったらしい。あの彼女にそんなロマンチストなところがあったのかと、感心もする。
けれど、俺がヒロイン呼ばわりされるのは少々納得がいかない。
「って……俺の方がヒロインかよ。釈然としねえな」
確かに、ボーダーが関係ないところでは彼女の方がしっかりしている。特に俺がどうしても苦手な犬と水に怯えるたびにいつも彼女は守ってくれているし、今だって溺れた俺を岸に引き上げてくれたのだ。
しかし近界民が来たときに**を守るのはボーダー隊員の俺であってほしいし、知らない男に狙われたときもそうであってほしいと、そうしてやりたいと思う。
「……どしたのテツ?」
「たまには、俺にも守らせてくれよ?」
次は背面を乾かそうと**の手を借りて身を起こせば、目の前の彼女は呆れたような照れたような笑みを返す。
全て乾ききるには、まだ時間がかかりそうだ。
「テツが守ってくれるのかー……じゃあ、その時はよろしくね」
あとでかげうらでこのことを話したら、絶対カゲや鋼にからかわれるのだろう。
それでもいいやと俺は彼女の手を握ったまま、じっと目を合わせた。
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