野薔薇の棘

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姉から譲られたロリータ服姿で彼女――**とデートしてからというもの、すっかり女物の服で絡み合うのが常となってしまった俺。この間から始めた配信で新しいロリータ服を2人分買えるまでに稼いだものの、そのお揃いの服をどうしようかと相変わらず2人で試行錯誤している日々だ。
まず**のサイズと俺のサイズが――できれば色違いで展開しているかどうかを念頭に置く必要があるし、あと露出も問題になってくる。彼女はともかくとして俺はあの監獄にいた頃に鍛えていたおかげで脚に筋肉がついたままだから、あまり肌を見せたくはないのだ。

「あんまり太ももとか見えないのがいいよね、」
「ああ。**の姿をそんなに見せたくないし――それに、露出してないやつを脱がせるのがいいんだろ、」

結局何も決まらず、今も最初に姉からもらった服で絡み合っている。

***

いつも通り向かい合って、キスをして。それから互いの身体を撫で回しながら、中途半端にはだけさせて――完全にいつも通りの流れだったけれど、それではつまらなくなってしまって。
あることを思いついた俺は、**に耳打ちした。

「なあ、**」
「んー……?」
「今日は、**が俺を責めてみる?」

俺のその提案に、少し戸惑ったような顔をする**。
まあ、無理もないだろう。**は今までずっと俺に責められっぱなしなのだから。けれど、たまにはこういう刺激的なプレイもいいだろうと思ったのだ。

「責めるって、どうやって……?」
「俺がいつもやってるみたいに。全力で俺は拒否るけど、俺の足をもってしても逃げられないくらいに捕らえてみて」
「……うん、」

戸惑いながらもどこか嬉しそうな様子の**を見て、俺もつられて笑みを浮かべる。
ああ、彼女はこれから俺をどうしてくれるのだろうか。俺を惹きつけて離さない白薔薇はどれだけ鋭い棘を隠し持っているのだろうか、そんなことを考えているうちに顔を両手で持ち上げられ、瞳がかち合う。
そのまま俺の脚の間に彼女の脚が割り込み、俺を真似ているのかいつもより低めの声で囁かれ――彼女の方から、少し強引に唇が重ねられた。

「ふふ、豹馬くん、やっぱり可愛いなあ……お姫様みたい、」
「だから、**のが可愛いって。いつも言ってるだろ?」
「んーん……豹馬くんの方が、可愛い」

触れるだけのキスをして、そして一瞬で離れる唇。
何度か啄むように口づけたあと、遠慮がちに舌を差し込まれて。俺もそれを導くようにして絡めていくうちに、だんだんと深くなっていった。
――ああ、気持ちいい。
彼女はよく脳髄まで蕩けてしまいそうになると言うけれど、それはつまりこんな感覚だったのかと思い知らされる。そうしてしばらく互いに貪るように求め合ったのち、ゆっくりと唇を離された。

「豹馬くん、興奮してるの……?」

熱を帯びた声で囁かれる、その声だけでぞくりとしてしまう自分がいた。
上に乗られる体勢も服もいつも通りのはずなのに、今日の**は何だか雰囲気が違う気がする。いつもより大人びていて、そして何よりも艶っぽいのだ。そんな彼女を見つめているとまるで自分の知らない女性のように思えてしまって、それが妙に背徳的で興奮を掻き立てられてしまうのだが――あいにく、今の俺にそんなことを考えている余裕なんてなかった。

「豹馬くんってば、女の子の服着ないと興奮できなくなっちゃったんだもんね。ワガママお嬢、だもん、ね……っ、」
「っ……おい、」
「私もだよ。女の子の服着た豹馬くんとするの、その……好き、だから……」

やや楽しげな、されどやはり自信がないのかあるいは照れているのか、後半は震えて小さくなった声で零す。
前提として俺は心も体も男だし、普段外に行くときだって男物を着る。女物の服を着るのは**の前だけだし、出掛けるにしても彼女とのデートで着ていくだけだ。それに何度も呼ばれるたびに言い返していることだが、周りからお嬢だのくのいちだのと呼ばれるのは真っ平御免だ。
けれど、**の口からそう言われるのは不思議と嫌ではなくて――周りに対するように反論するどころかむしろ嬉しいと感じてしまっている時点で、もう手遅れなのだろう。

「ぅ……っ、」
「んー……ふふ、豹馬くん……♪」

不意に首筋に吸い付かれて、思わず変な声が出てしまう。そのままブラウスのリボンを解かれ、鎖骨や胸元にも同じようにキスされて、痕をつけられているのだとわかった。
いつもは**のナカに挿入している際に動いてもいいという合図として口で解かれるものだったので今ここで解かれることに驚いてしまったけれど、どうやら今日は俺のペースで動かせようとするつもりはないらしい。ここまで焚き付けてしまったのが俺である以上、仕方ないのだろう。

「ね、豹馬くんも期待してるのかな……?」
「き……訊かなくってもわかるだろ、」

俺の首に腕を回して抱き締めながら、うっとりとした表情で呟く**。それから、今度は耳や頬に軽いキスが降ってきた。
軽いリップ音が響く中、されるがままでいるうちにいつの間にかジャンパースカートの中に手が入っていて。その指先は俺の太腿を撫で回しながら、少しずつ中心部に向かって這い上がっていき――そして下着越しに、そっと中心に触れられた。

「ふふ、そうだね。今日は私のペースでいいんだ、よね?」
「あ……ああ。責めてみるかって言ったの、俺だしな……」
「よかった。……ね、ヘアゴム、貸してくれる?いつも使ってるやつでいいからさ」
「ヘアゴム?ああ、これでいいなら……」

唐突に要求された内容に戸惑いつつも、俺は言われた通りにいつも使っている黒いヘアゴムを手渡す。そのまま彼女は俺の下着を脱がされ、既に熱を持ってしまっている中心を縛られてしまえば――いよいよ俺は自力で達せなくなってしまった。
だというのに、勃ち上がった中心にコンドームをつけようとする間もなく、手で扱かれ否応なしに高められてしまう。

「お、おい……生はやめろ、って……!」
「大丈夫だよ、今日はここには出させないから……♡」

嬉しそうな顔で告げたあと、**は再び俺の上に跨った。そして、俺のモノを掴んで秘部に宛がい――ゆっくりと腰を落とし始める。
いつも通りの体勢、いつも通りの手順。けれど今はいつもと違って彼女が主導権を握っている、そんな状況に俺は否応なしに昂っていく自分を感じていた。

「ぁ、あっ……豹馬く、豹馬くん……っ♡」
「っぅ……あ……っ、」

いつの間に解していたのか、あるいはこのシチュエーションに興奮していたのか。俺に絡みつくような彼女の内壁とそれによってもたらされる快楽に、早くもイってしまいそうになる――けれど俺に許されているのは、ただ内側でぐつぐつと滾る熱を抱え込むことだけ。
やがて俺の胸元に手を置き、自ら腰を振る**。少し仕返しをするように彼女の腰を掴み引き寄せればより一層深いところにまで入り込んだけれどそれだけで、刺激によって限界まで張り詰めてしまっているというのに未だ射精を許されない。それが苦しくて気持ちよくて、どうにかなってしまいそうだった。

「ふふ……このまま豹馬くんのお尻の穴を開発でもして、そこでイケるようにしたら……っ、あ、ひょーまくんは、本当に女の子になっちゃうの、かな……っ♡」
「っ、おい……っ、それは、さすがに……!」
「で……でも、痛いだろう、し……っん、ぁ、私もこれで、充分気持ちいい、から……♡」

とんでもない提案をされてしまい、一瞬頭が真っ白になる。
そんなこと本来想像するだけで恐ろしいはずなのに、女装した姿で彼女を貫くことにしか滾らなかったはずなのに、逆に後ろから貫かれることを想像し期待を寄せかけてしまう自分がいた。もしも彼女に尻穴を開発されて、そこにアナルプラグやらペニスバンドやらを挿入され達してしまったら――そう考えるだけで、ぞくりと震えてしまう自分が。
普段は受け身で俺を悦ばせることだけを考えてくれている彼女は、今日はまるで別人のように主導権を握っていて。結局俺はこの白薔薇に惑わされる身でしかないのだと、身をもって思い知らされた。

「はぁ、は……っ、豹馬く、ん……♡」

やがて絶頂を迎えたのか俺の上で脱力し、少しして引き抜く**。
そしてようやくヘアゴムの締め付けから解放された俺のそれは、捲り上げたジャンパースカートを汚しそうな勢いでどろどろと大量の精液を垂れ流していて。それに慌てた彼女がボックスティッシュを棚から下ろし、俺のモノから溢れた白濁を拭いてくれた。

「悪い、拭かせちまって……大丈夫なのか?」
「平気だよ、豹馬くんのだもん。それに、元はと言えば私が縛っちゃったからだし……」
「いや、それは元々俺が、**に俺を責めてみないかって提案したからだろ?」
「ふふ……そうだね、」

優しく微笑む彼女の笑顔は、純粋な白薔薇そのもので――けれど、その白薔薇はとんでもなく鋭い棘を隠し持っていた。

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晴天のじゃじゃ馬