野薔薇の蕾

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ロリータ服を着て絡むようになってから、何ヶ月かした今。
いい加減に新しい服を買わなければならないとは思うものの、そう決めたときから試験だのなんだのでだいぶ時間が進んでしまった。けれど今は互いに落ち着いたタイミングということもあり、今日は下見を兼ねた2回目のロリータ服デートに出掛けることにしたのだ。
その前に彼女である**にメイクを施してあげたくて、昨日から俺の家に泊まってもらっている。

「ごめんね、何から何までやってもらっちゃって、」
「いや、いいよ」

――俺好みに仕上げた**を、俺の手で乱すのがいいんだろ?
そんな言葉を飲み込みつつ、ロリータ服姿で座る**を前にして。姉から譲られた化粧用具を手に、俺は彼女の顔へと手を伸ばした。

***

ブルーロックプロジェクト終了後――結局日本代表の道を諦め東京の大学に進学した俺は、アルバイトをしながら一人暮らしをしている。
学部は元々英語と歴史が好きなこともあり、英文学を専攻することにした。あの頃の合同訓練でイングランドを選んだ際はただ単に自分のスピードを試したいからに他ならず、イギリス自体に何か思い入れがあるわけではなかったものの、ロリータ服を着始めてからというもの英国の歴史にも興味を持つようになった結果このような選択に落ち着いたのだ。
大学にはもちろん男物の服で通っているし、**と毎回ロリータ服を着て行為に及んでいることなど誰にも話したことはない。一度、同じく彼女持ちの同級生に行為がマンネリ化しているから助けてほしいとアドバイスを求められたこともあったけれど、その際はコスプレを勧めこそしたものの俺が行為の際に女装しているとまでは言えるはずがなかった。
だから、これは俺と彼女と、俺の姉ちゃんだけの秘密。

「ほんと、大学上がってから東京来るようになってよかったよ。俺の地元にはそういうのねーもんな」
「あはは……鹿児島にはね、さすがにね……」

原宿の人混みの中、いつも着ているロリータ服姿で手を繋いで歩く。家の中ではもうすっかり見慣れているものの、外に着ていくのは初めてのロリータ服デート――つまり、俺が初めてロリータ服を着た日以来で。
靴だって、その日の最初に原宿のビジュアル系の店で男物のそれらしいものを買って以来それきりだ。服も髪もロリータ仕様なのに対し足だけが普通のブーツなのはおかしいだろうと、俺を女装させた責任を取らせる形で姉に金を出してもらったのだ。あれ以降今までこの服はずっと室内でしか着ていないけれど、こうやって再度ロリータ服で**と出掛ける機会が来たのだから、あのとき靴を買っておいて正解だったということだろう。

「ふふ、楽しみだね。どこかカフェとか行く?」
「まあ行くけど……今日は新しい服買いに来たんだろ?先にそっち行こうぜ」

流石にいきなり新しい服でカフェに行こうとは思わないけれど、今日の目的はあくまで買い物だ。
彼女にどんな服を着せようか、どんな服で絡み合おうか――そんなことばかり考えながら、俺は**の手を引いてアパレルショップへと向かった。



「これ、どう……かな。似合うと思うんだけど……」

ハンガーにかかったジャンパースカートを、俺の身体に当てて見せる**。
今着ているものよりもそれは幾分かシンプルなそれは確かにフリルやリボンがあしらわれていて可愛らしくはある。けれど、軍服のようなディテールが強く出ており――どちらかといえばかっこいい寄りのそれは俺の求めているものではないような気がして、首を傾げてしまう。

「あー……なんか違うかもな。ごめんな、」
「だって、あんまり可愛いのは恥ずかしいのかな、って……今着てるのも、豹馬くんの好みで選んだわけじゃないでしょ?」

確かに今着ているものは姉が選んだもので、それも俺の姉が**とお揃いで着ることを前提としたものだ。当然、サイズこそ合ってはいるものの、男の俺が着ることは到底考えられていないデザインで。
それでこそだ、と今では思う。
ロリータ服を着なければ興奮できないようになってしまった今でも、ロリータファッションそのものに思い入れがあるわけではないし、女扱いされるのも好きではない。けれど、あくまでも女物の服で女にできないことをしている倒錯感を味わうために着ているのだから、服の方はひたすら女らしいものがいいに決まっている。

「いいんだよ、可愛いので。じゃなきゃ、女物着てる意味ないだろ?それに、」
「豹馬くん?」
「**だって――『女みたいな俺』にめちゃくちゃにされる方が、滾るんだろ?」

耳元で囁いてやれば、**の頬がみるみると紅潮していくのが見える。
そういえばロリータ服を着て絡むようになってから何ヶ月かしたある日、一度普段の服で絡み合おうとしたときがあった。けれど、そのときは彼女も俺も一気に冷めてしまって――結局、あの服に着替えてからの行為でなければダメだという結論に至ったのだったか。
紆余曲折あって最終的に**と選んだのは少し薄手の色違いのジャンパースカートと半袖のブラウスとカーディガンで、例の如く俺が黒を、彼女が白を基調としている。このまま揃いの袖留めやガーターベルト、靴下や髪飾りなども買っていく予定だ。

「これ……ちょっと透けてるけど、大丈夫?」
「ああ、靴下もあるし大丈夫じゃねーかな……ほら、早く会計済ませちまおうぜ。買ったやつはクリーニングに出すから、しばらくは今着てるやつで絡み合うことになるけどいい?」
「大丈夫だよ。私は義姉さんが買ってくれたこれ、気に入ってるし……」
「ん。じゃあ、決まりだな」

結局無事に決まったこともあり、俺は**の手を取りレジへと向かった。

***

それから一度駅に戻り、買った服を駅前のコインロッカーに預けた。小物もしまっておきたかったけれど幸い一つの紙袋で済んだし、違う店でいいものが見つかったときに既に買ったものと被らないようにするために参考として持っておくことにしている。
手を繋ぎ、2人で原宿の街を歩き回る。
昼ご飯はこの間行って美味しかった抹茶のクレープとも迷ったものの、今日はそれだけで満ち足りる気がしなくて。歩いている途中に見つかったたらこパスタ屋に入り、俺は炙り明太子のスパゲッティを、彼女は豆乳クリームスパゲッティを注文した。定食だとサラダか生姜ご飯がついてくるものだが、生姜を苦手としている俺がサラダを選んだことは言うまでもない。

「あ……ご飯、私が払うよ?」
「いーよ別に。俺が誘ったんだし」
「でも、服とかの分は全部払ってもらっちゃったし……せめて私の分だけは払わせて?」

**の言う通り、先程ロリータ服を買う際にレジに並んで会計をしたのは俺だ。けれど服や小物は配信で視聴者から振り込まれた金で払った――つまり元々ロリータ服を買うための金なので彼女が申し訳なさそうにする必要はないのだが、それでも自分の分は自分で払いたいというのなら、俺もこれ以上は何も言わなかった。
相変わらず、穏やかで優しい**。そんな彼女を独り占めできているのだと思うだけで、俺はもうどうにかなりそうなくらい幸せだった。

「なあ、このあとどうする?」

半分くらい食べ進めたところで、**に尋ねる。
どこに行くのかは、厳密には決めていない。最後に家かホテルかに行ってこの服で絡み合うことは決まっているけれど、それ以外はノープランだ。
前に行ったのと同じ店に行って、また黒糖タピオカでも頼むか。それともまた別の店を探そうか――そんなことを考えながら、俺は**の返事を待つ。

「んー……豹馬くんとならなんでも楽しいよ?」
「そっか。じゃ、早く食べて原宿見て回ろうぜ。今日含めて、まだ2回しか来てないだろ?」

微笑みながら答えてくれた彼女に、俺も笑いながら返す。
――ああ、早く**と絡み合いたい。
今すぐ身体に触れて、唇を奪って、滅茶苦茶にしてやりたい――そんな欲望が沸々と湧き上がるのを感じながら、俺は残りの料理を口に運んだ。

***

それから昼食を食べ終え、2人で原宿の街を再び見て回った。
俺は抹茶の、**はストロベリーのクレープを買ってあーんし合ったり、可愛い雑貨屋を見つけて俺の好きな猫モチーフのヘッドドレスを彼女と色違いで買ったり。通りがかりの人の中には双子ロリータで歩いている俺と彼女に声を掛けてきた奴らもいたけれど、指を絡めるなどして入り込めない雰囲気を少し醸し出してやればすぐに去っていった。

「ねえ豹馬くん……このあと、ホテル行く?」

俺と手を繋ぎ、指を絡めながら尋ねてくる**。
午後4時――まだ時間的には少し早いけれど、俺はその提案に首肯する。駅のコインロッカーに預けた荷物を全て取り出し、その足で近くのラブホへと入った。夕ご飯は6時くらいに買いに行くか食べに行くかするとして、それまでの間はたっぷりと**を可愛がってやろうと心に決めた。
俺の**。俺が服を着せて、俺が髪型を整えて、俺が化粧をして――そうして出来上がった、俺好みのお姫様。

「ん、豹馬くん……?」

ベッドに押し倒せば、不思議そうに俺を見つめる彼女。
いつもは向かい合わせでしているからこうして上から見下ろすのは初めてで、だから少しだけ違和感を覚えているのだろう。そんな彼女を宥めるようにいつものようにキスを落として、舌を絡ませて――そうすれば、次第に彼女も蕩けた表情を見せてくれる。
――俺の、俺だけの**。
他の誰にも渡したくないし、俺以外の男には絶対に抱かせてやらない。
これから先もずっと俺が着飾らせて、俺だけが愛で続けてやる。このフリルと、レースと、リボンの花園で。

「**。こっち向いて?」
「え?うん……っ」

顎に手を添え、こちらを向かせ――そのまま今度は深く口づけて、お互いの唾液を交換するように何度も角度を変えて貪り合う。俺の長い赤髪が頬を掠めれば、くすぐったそうに身を捩る**が可愛くて仕方がない。
ブラウスに手をかけ、完全には脱がさないようにしつつゆっくりとボタンを外していく。そのままジャンパースカートの裾を捲り上げドロワーズも下ろせば、彼女が穿いている下着が露わになった。ここに今日買ったガーターベルトを合わせてみればどんなに扇情的な光景になるだろうか――なんて想像を働かせつつ、俺は更に服を乱していく。

「あ……豹馬くん……っ、」
「ん、綺麗だよ」

立っていたらそのまま重力に従いずり落ちそうなくらい、乱れた服。そこから覗く、**の白く滑らかな肌。
こんなにも俺を魅了して離さない彼女を、どうして手放せようか。
この服で絡み合っているときは度々お姫様みたいと言われるけれど、それを言うなら――お揃いの服を着ている身で言えることでもないが、俺にとっては**こそが理想のお姫様だ。清廉な中に背徳的な雰囲気を兼ね備えた彼女は、どうしようもなく俺を虜にして止まない。
ああ、可愛い。もっと乱れて。もっともっと、俺だけに溺れて。

「あ、豹馬くん……だめ……♡」

白いレースの砂糖がかかった、甘く柔らかい薔薇を食む。
ショーツに手をかけ、ゆっくりと引き下ろして。そうして剥き出しになった秘部からは、既にとろとろと蜜が溢れていた。
指先で掬い上げてやれば、それだけで彼女はびくりと身体を震わせる。そのままつぷりと指を沈めてやると、甘い声と共にナカが締まった。

「あ、あっ……豹馬くん……♡」
「可愛いよ、**……」

指で彼女の弱いところを擦り、同時に花芽を押し潰すようにして刺激を与えて。そうすれば**は一層高い声で鳴いて、俺の指を締め付けてきた。
床にばさりと広がる彼女の髪も、上気した顔も、脱げない程度に乱された俺と揃いの服も、濡れた瞳も、唇の端から零れる唾液も、華奢な身体も――これを着て絡み合っている瞬間だけは、全て俺だけのものだ。

「はぁ……あ、ああっ、豹馬くん……!♡」

やがて**は一際大きく身体をしならせると、シーツの上に倒れ込んだ。ぐったりと横になる彼女は糸の切れたマリオネットさながらで、ここに薔薇の花弁やら赤いリボンやらが散らされていたなら最高に絵になっただろう。
フリルも、レースも、リボンも、全ては**の肢体を彩る為に存在していて――そんな風に思ってしまうくらい、今の**は美しかった。

「ひょーま、くん……?♡」
「ん……大丈夫か?」
「ふふ、へーきだよ……♡」

息を整えながら、俺の名を呼ぶ**。達したばかりのそこに触れればそこはもう十分すぎるほど潤っていて、俺を受け入れる準備は整っていた。
俺の指で散々可愛がられ、一度果てた彼女の瞳はどこか虚ろで。それでも、その奥には確かな熱が宿っているように見えた。

「**、なあ……そろそろいいか?」

尋ねれば、**は弱々しい手でジャンパースカートの裾を上げる。そして俺が挿れやすいようになのか脚を大きく開き、自ら膝裏を抱えた。
いつもの座った状態では見えないような部分まで丸見えになっていて――思わずごくりと唾を飲み込み、彼女に覆い被さるようにしつつゴムをしたばかりのそれを一気に奥へと押し進める。

「あ、ああっ……豹馬く……♡」

普段とは違う体位だからだろうか、それとも先程絶頂を迎えたばかりだからだろうか。**のそこはとても狭くて、俺のものを強く締め付けてきた。あまりの心地よさに、すぐにでも達してしまいそうになる。だがそれは彼女も同じだったようで、俺のものが最奥を突いた途端彼女は背中を仰け反らせて再び軽く達してしまったようだった。

「はぁ……あ、ああっ、豹馬くん……♡」

ぎゅうと強く締め付けられ、危うくイキそうになったのを堪えて。それから俺は、ゆるゆると腰を動かし始める。
最初はゆっくりと、徐々に早く激しく――緩急をつけながら抽送を繰り返していけば、**の口からはひっきりなしに甘い声が上がった。

「ひゃ、あ……んんっ、あ……♡」
「は……もう、出る……**っ……!」
「豹馬くん……豹馬くん……っ♡」

**の手を取り、ベッドに縫い止めるように押さえつけて。そのまま何度もキスをして、舌を絡め合って。そうしながら、段々と動きを速めていく。
彼女もまた限界が近いのか、自分からも快楽を得ようと積極的に動いている――それが、嬉しくて堪らなかった。

「あっ、あ、豹馬くん……また、わたし……っ♡」
「ああ、いいよ……一緒に、な……っ、」
「あ、ああっ、豹馬く……っ、〜〜っ!!♡」

ぐり、と最奥を突き上げ、それと同時に花芽を親指で押し潰してやれば、**は一際高い声で鳴いて身体を震わせた。同時にナカがきつく締まり、俺は耐えきれずに避妊具越しに精を放つ。
やがて、くたりと力が抜けた**はそのままシーツの上に倒れ込んだ。

「**、」
「んー……?♡」
「夕食、もうちょっと後にしような、」

荒い呼吸を繰り返す彼女は、暫く起き上がることは出来なさそうだ。
これなら、夕食はもう少し後の方がいいだろう――そんなことを考えながら俺はナカから引き抜き、軽く彼女の頭を撫でた。

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晴天のじゃじゃ馬