もう一度うまれて響きあおうね
彼女――**が、ヴィランに襲われた。
プロヒーロー・インゲニウムとしてヴィランをなんとか確保した頃には既に彼女は病院に送られており、一命はとりとめたものの昏睡症状に陥っていたことからしばらくの入院が決定したと電話がかかってきた。サイドキックらには申し訳ないが書類仕事などを彼らに全て任せることにし、僕は彼女がいるという病室に駆けつける。
「**……?なあ、応えてくれ……っ!」
そう呼びかけても、眠っている**が僕の声に応えることはなかった。
***
2日後。
ヒーローの仕事を全て休んで付きっきりで看続けている**が、ようやく意識を取り戻した。けれど、僕を視界に捉えた彼女の言葉は予想だにしていなかったもので。
「あれ……飯田くん、なんだよね……?」
いつもは僕を名で呼ぶ**が、珍しく苗字で呼んできたのだ。
おそらくは地面に叩きつけられ頭を強く打った衝撃で、僕と同級生だった中学3年生当時以降の記憶が抜け落ちてしまったのだろう。より詳しく言うと、彼女が同級生全員を名前呼びし始めた2学期以降の記憶が。
そんな彼女に「今の僕はプロヒーローだ」などと言ってもきっと混乱してしまうだろうから、あえて身分を隠しつつ今までの経緯を説明することにした。
「……ああ、君はヴィランに襲われたんだ」
「それで、来てくれたってこと?ありがとうね、受験勉強で忙しいはずなのに……」
「いや、いいんだ。君が心配で、」
こんな事態になるなどとは考えたくもなかったのだが、現実になってしまった以上はどうにかして**の記憶を取り戻していくしかないのだろう。あるいは、何もかも忘れた状態で改めて恋人としての関係を築き直すか。
――果たして、どちらが彼女のためなのだろうか。
それは、今まで解いたどんな問題よりも難しいものだった。