焦念の惑星
※kmt学園時空
太陽は平等だ。
とても強い引力で沢山の者達を引きつけ、その全てを平等に照らす。
距離の違いこそあれど、与えられるものに違いはない。誰が特別か、などという概念はそこにないのだ。
――そう、わかっているのに。
***
隣の席の彼は、礼儀正しく真面目だ。それでいて、真っ直ぐで朗らかだ。
家がパン屋を営んでいるからか、隣からはいつもパンの匂いがする。
「おはよう、**さん」
「わっ…って竈門くんか…」
席に着いて、彼は隣の私に挨拶をする。父の形見だという、花札のようなピアスを揺らして。
いつもの事なのだけれどやっぱり彼が眩しくて、ふいと顔を背けてしまう。
こんな私にも優しくしてくれる彼は、ピアスに描かれているのと同じ太陽だ。
私は、照らされながらその周りをただ回るだけの惑星。
「**さん?」
「な…何でもないっ」
隣にあるこの温もりに、いつまでも甘えていられたら。そしていつかは、私だけを照らしてもらえたら――なんて、自分勝手な理想を並べてしまうのは私の悪い癖。
――いけない、いけない。勘違いしてはだめだ。
彼は「私」にではなく、「皆」に優しいんだ。私がその「皆」に入っているから結果的に私にも優しいだけで、「私」が特別な訳ではない。
事実、私より前の隣の子にも、彼は同じような対応をしていた。しのぶさんにもカナヲさんにも、アオイさんにも同じように笑っていた。
「そっか。何でもないなら安心だ」
「…うん、ごめんね心配かけて。私は大丈夫だよ」
考えてみれば、こうして隣にいられるだけでも幸せなのかもしれない。
一瞬でもそれ以上を望みかけてしまった私が、間違っているのかもしれない。
そうだ。
この想いは、叶ってはいけない。
彼が太陽であり続けるのは誰のものにもなり得ないからこそで、私が独り占めしたところでその光は失われてしまうのだ。
苦しいだけだとわかっているのに、まだ焦がれ続ける私はきっとどうしようもないんだろう。
出逢ってさえいなければ、こんなに苦しい思いはしなかったのに。
「…ただ、想いを諦めただけだよ」
無理やり作った笑顔と、その上を流れる涙とを引き換えに。
ずっと私を苦しめていたそれは、名前のないまま息を潜めた。