双青の縁
※夢主の地底世界での名前が出ます
「ショウコ、『家族』とは何だ?お前にも、そのようなものがいるのか?」
私の弟が操縦しているものに似た、黒い機体を駆る人が言った。見るからに、お兄さん達の仲間らしい。彼は最近アキタ達と交流を深めていたらしいので、その影響で知りたくなったのだろうか。
考えてみよう――私に『家族』はいるのだろうか?
ただ単に血の繋がりのある者達を纏めてそう呼ぶのだとしたら、私と私の親達はその定義には当てはまらない。
私と血の繋がりのある者達――羽立家は私を今の義実家に引き渡した。つまりは私が生家を離れた日から、その『家族』との縁は断絶されたようなものなのだ。
その定義に義実家を含めるとしたらどうだろうか。
いや、私の義実家――男鹿家もきっと当てはまらないだろう。あの一家は――少なくとも義父母は、私にとって義弟となった実子・アキタのことしか頭に入れていなかった。そんな『家族』の縁は薄っぺらい紙切れ程度に過ぎない。
従って、今の私に『家族』などいない、というのが一番適切な解答である。
「…いないよ。君はそれを訊いたところで何になるの」
「いや?ただ知りたいだけだ」
「だとしても、なんで私なの。お姉さんにでも訊けばいいでしょう」
「あいつらにも訊いた。よく知らないそうだ」
彼らは生い立ちが特殊であるらしい。そこは、時々私との会話が噛み合わないことからも窺い知れる。けれど、私のそれもある程度は特殊であることには間違いない。
故に、私にも模範解答は出せないのだ。
「…でも、ごめんね。私もよくわからないの」
「そうか。なら地上で速杉ハヤトにでも訊くことにするか…」
「うん、それがいいと思うよ」
そう答えた時の彼の顔は、少し晴れ晴れとしていた。
***
彼はここを出るのだそうだ。どうやら、アキタ達のいる人間側につくらしい。
そういえばお兄さんは、彼のことをアキタの友達に頼んでいたな。確か速杉くんって言ったっけ。
「君は向こう側に行くの?」
「ヒトとの共存との道を探していてな」
「そうなんだね、それでか…」
「ああ。…お前は、ずっとここにいるつもりなのか、」
――そうだ。
私も、そろそろここを発たなければ。
お兄さんは、私の存在がお兄さん達の知り合いに見つかると危険だから逃げるようにと言ってくれた。けれど、あちら側の事情がどうであれ、この場所にいつまでもいられるわけではないことに変わりはない。
いずれ私は全てを受け入れ、前に進まなければならないのだろう。
そして、義弟に謝らなければ――勝手に家を出て行った私を許してくれるかどうかはわからないけれど。
「…そうだよね。整理がついたら、私も向こう側に行くよ」
「そうか、それなら安心だ」
「だからさ、それまで待っててよ」
私が『男鹿**』としての私と再び向き合えるその日まで。