おねえちゃんとあそぼう!
私は年下の彼氏である世一くん――よいちゃんを甘やかしてあげるのが好きだ。彼は普段部活で忙しいけれど、部活帰りに時間がある日やそもそも部活が休みの日には近所である私の家にこうやって甘やかされに来ている。
Domとしての欲求なのか、それともただ単に彼が年下だからなのかは自分でもわからない。それでも彼を甘やかすと安心するし、嬉しそうにしてくれるからついつい構ってしまうのだ。
けれど今日の私は躾をやりすぎてしまったみたいで、セーフワードを使わせてしまった。
「えらいね、よいちゃん。お姉ちゃんが行きすぎないように止めてくれたんでしょう?」
「姉さん……っ、」
「遊びたいときは遊びたいって言っていいし、止めたいときは止めていいの。私とよいちゃんのPlayをコントロールできるのは、よいちゃんなんだから」
Domに従い命令を達成することで満たされるSubにとって、セーフワードを使うことは私に反逆するように感じとても負担になってしまうらしい。元々気弱で真面目で泣き虫世っちゃんと呼ばれた彼なら、尚更だ。けれどセーフワードをうまく使えなければ、いずれ彼はサブドロップに陥ってしまうだろう。
だからこそ、こうやってちゃんと使えるように普段から躾けている。私は彼を甘やかしたい、構ってあげたいだけで、決して彼を苦しめたいわけではないのだから。
「よしよし、Goodね。あとで一緒に、よいちゃんの大好きなきんつば食べようね」
「っ……俺を、許してくれるのか……?俺のエゴだけで、姉さんに逆らうような俺に……?」
「ええ、そうよ。それに、よいちゃんだって同じ。セーフワードを使われたら、ちゃんとPlayを止めてあげないとダメよ」
それに彼は私の前ではSubだけれど、厳密に言えば Switchだ。
今でこそDomである私とPlayに及ぶ関係ではあるけれど、いつかはDomとしてSubとPlayに及ぶことだってあるだろう。そうなればよいちゃんはセーフワードを使われる側になるわけだが、もし使わせてしまったとして彼自身相手のSubに適切な処置ができるだろうか。
部活中や試合中にはDomになると自己宣告されているものの基本的にスポーツ全般の観戦をしない私はその光景を見に行ったことはなく、今ここにいるSubとしての彼しか知らない。無理にSwitchさせるのは可哀想なので今のところはさせないことにしているけれど、それでもいつかはDomとしての彼も見てみたいし、私情を抜きにしてもDomとしての擬似的な体験をさせなければならない日が来るのだろう。そしてその体験をさせるには、純然たるDomである私相手では決してできない。
「……なあ、姉さん。それって、」
「んー?どうしたの、よいちゃん」
「俺が、姉さん以外とPlayをする可能性を考えてるのか……?」
けれどそんな私の親心にも近い心配をよそに、彼はどこか不安げな表情を浮かべていた。
――ああ、そういうことか。
この子はどこまでも、私が思っている以上に私を愛し、懐いてくれているのだ。
私としてはあくまで彼の成長過程に必要と考えていたことなのかもしれないけれど、彼にとってそれは耐え難い苦痛だったのだ。
「……ごめんなさいね。ちょっとよいちゃんのこと心配しすぎちゃったみたい」
「姉さん……」
「でもね、よいちゃん。私は……」
私はDomだから、Subにはなれないの。Domになった貴方とPlayすることはできないのよ――そう言いかけた言葉は、必死に服にしがみついてくる彼の言葉によってかき消された。
私以外とPlayする関係を成立させる気はないのだと言い切られてしまえば、いくらDomである私でも言い返すことなどできなくて。
「姉さんが純粋なDomってことも、Domとしての俺とはPlayができないことも分かってる……けど、俺は姉さん以外とPlayする気はない」
「よいちゃ……っ、」
「だから……だから、俺から離れないでくれ」
――本当は、私だってそうだ。
いくら理性では彼の将来を案じようと、本音を言えば彼が他の誰かとPlayするなんて嫌だし、想像すらしたくない。
だから彼が望む限りは、こうして甘やかし続けてあげるつもりだ。私はずっと、よいちゃんだけのお姉ちゃんなのだから。
「……うん。大丈夫だよ」
ずーっと、おねえちゃんとあそぼうね。