極彩的享楽論

ピンク、水色、黄色、白。
母親の優が扱っている絵の具セットのように鮮やかな色をした丸いものたちは宝石でもアクセサリーでもなく、全て経口の錠剤だ。正式名称は確かメチレンなんちゃらと優は教えてくれたけれど、長すぎて勉強のできない俺には覚えていられなかった。これを使うと、5時間くらいは俺の中にいた――あの日さよならしたはずのかいぶつの姿や声が、再びはっきりと感じ取れて。
そんなわけでこの錠剤のうちほとんどはかいぶつと話すために使っているのだが、中には少し違うものも混ざっていた。

「ね、**ちゃん」
「ん?」
「ほら、見て!」

彼女である**ちゃんの前。ラムネのようなそれらを手の上に広げてみせれば、彼女は不思議そうに首を傾げた。一際目を引く紫ベースに王冠の絵が描かれたものは、なんというか――その、性的な意味で気持ちよくなれる薬なのだとか。
使ったことはないけれど、開発した会社の親会社の一人息子である玲王が言っていたのだから間違いないのだろう。難しいことがよくわからない俺でも、それだけはわかる。

「廻くん、なに……それ?」
「んー?なんかね、気持ちよくなるお薬なんだって。**ちゃんも使ってみる?」

戸惑うような表情の**ちゃんに笑いかけるも、彼女はまだ躊躇っているようで。
まあ無理もないだろう、いきなりこんなことを言われてしまえば困って当たり前だ。けれどその裏に少しの興味が隠されているのはすぐにわかったから、俺はもう一度笑ってみせた。

「ちょっと、興味はある、けど……その、こわい、よ、」
「大丈夫大丈夫。俺も使ったことないけど、多分気持ちいいよ」
「……ほんとう?」
「うん。……だからさ、**ちゃん。舌、ベーってしてくれる?」

目の前で俺の真似をするように出された彼女の舌の上に、紫の錠剤を置く。水がないから少し苦いかもしれないけれど、あとで気持ちよくなれるならなんの問題もないだろう。ついでに俺も少し分けてもらうように口を塞ぎ舌を絡ませれば、途端に未知の快楽にびくびくと震える彼女の身体。
ああ、可愛いなあ。もっといっぱい気持ちよくしてあげたい。

「ぁ、あ、めぐるく、っ♡」
「どしたの?……ん、もう効いてるみたい?」
「わかんない、でも……ふわふわって、する、の、っあー……♡」


顔を覗き込めば、瞳は既に蕩けきっていて。頬は上気し息は荒くて、いつもより甘ったるい声をあげる彼女にぞくりとした感覚が背筋を走る。
もっと、もっと見たい。乱れた姿を見ていたい――そんな欲望を抱いてしまう俺にも、既に薬が回っているのかもしれない。

「ふふ、そっか」

俺だって、難しいことはわからないよ。でももう何もわからなくていい、考えなくていいからさ。
今日は、いーっぱい楽しもうね。

***

あの錠剤を口に含んでからどれくらい経っただろうか。すっかり熱に浮かされた頭では時間の感覚すら曖昧だ。
**ちゃんは今、ベッドの上で可愛らしく喘いでいる。

「ぁ、あう……っ、めのまえ、ちかちかして……っ♡」
「えへへ、気持ちいいね?**ちゃん」
「んぅ、あっ!♡めぐるく、っ、そこ……ぁー……♡」

目はその人の心が一番出るところだと思う。その目が蕩けているということは、心もそうなのだろう。きっと彼女はいま、快楽のことしか考えられなくなっているはずだ。
そんな**ちゃんの秘部に指を埋めて掻き回す度、彼女からあがる甘い声。もっと聞きたくて奥の方まで探るように動かしてやれば、彼女は一際大きな声で鳴いた。

「ここ、好き?」

問い掛けても返事はない。ただ、潤んだ瞳がこちらを見つめてくるだけだ。
それでも構わずむしろ好都合だと言わんばかりに弱いところを何度も責めてやると、その度に蜜が溢れて。それを掬って塗り込むように擦ってやれば、面白いほど腰が跳ねる。

「ひゃ、あぁっ!?だめ、めぐるくん、そこ……おかしくなる、からぁ、っ〜〜!!♡」
「大丈夫だよ**ちゃん、そのまま気持ち良くなって?」
「やら、めぐるく、こわい、よ……っあ、う、イっちゃ、あ―――……♡」

一際大きく背中をしならせて、**ちゃんが達する。ぎゅうぎゅうと収縮を繰り返すそこからゆっくりと指を引き抜けばその刺激だけでまた軽く絶頂を迎えたらしく、小さく声をあげながらぴくりと震えていた。
ああ、本当に可愛い。こんなことを思う俺にも薬が効いていて頭が可笑しいのかもしれないけれど、そう思わずにはいられないのだ。
だから――もっと、気持ちよくさせてあげよう。

「**ちゃん」

名前を呼べば、焦点の定まらないままの瞳がゆるりと動く。
快楽に堕ちたその顔がもっともっと見たくて、どろどろのそこに早く熱を沈めてしまいたくて。
彼女の足を軽く広げ、自分も前を寛げて。それからぐちゅりという水音と共に一気に貫いた。

「ぁ、う……めぐるく……っあ……〜〜〜っ♡」
「あれ?トんじゃった?」
「これ、すご……ぃ、ハマりそ……ぉ、っあ!♡」
「ん、よかった!……じゃあ、もっと気持ちよくなろ?」

どうやら**ちゃんもすっかりあの錠剤の魅力に取り憑かれてしまったらしい。こんなに簡単に堕ちてしまうなんて、やっぱり玲王の親の会社の傘下の薬は凄いなあ――そんなことを改めて実感しつつ、再び彼女の唇を奪った。
そして口付けたまま律動を再開すれば、彼女の中がきつく締まって。俺もそれに抗うことなく、欲を吐き出した。