メルヘン売りの金魚たち

「ア〜ンリちゃん!」

赤髪と抜群のスタイルが目を引く彼女――帝襟アンリは、私の1年後に日本フットボール連合に入ってきた女職員だ。抱えている書類の束は、おそらく今私達が関わっているプロジェクト――青い監獄関連のものだろう。
彼女はあの腐った銭ゲバ男性幹部達とは違い誇りを持って日本代表の優勝を目指していて、以前は選手としても活躍していた絵心甚八をコーチとして招聘し青い監獄プロジェクトを動かすくらいだ。私もプロジェクトが始まってからは絵心さんのサポートに回っているが、物言いは厳しいけれど腕は確か――そんな絵心さんを招聘したアンリちゃんは本当に見る目があると思う。
男性幹部相手だろうと強気な物言いをする男勝りな性格の彼女を人は生意気だとよく言うけれど、私はそんな物怖じしないアンリちゃんに憧れていた。
いや、違う――私は、彼女を恋愛対象として好いているのだ。

「**先輩?」
「それ、半分持つよ。どうせ行く場所は一緒なんだしさ、持ってあげる」
「あ……ありがとうございます!**先輩って、優しいですよね!」
「えー?そうかな?」

アンリちゃんはそう言うけれど、決して誰にでも優しいわけじゃない。優しくするのはアンリちゃんにだけ――好きな人にだけだ。
彼女が持っている書類の半分を受け取り、私達は絵心さんの待つ部屋に歩き出した。



絵心さんの部屋に入ると、彼は机に向かって作業をしていた。
どうやら青い監獄プロジェクトの運営資金が足りないらしく、それを稼ぐために私達をカメラ越しに収めてそのビデオを売り捌くことにしたらしい。選手を金儲けの道具にしないだけまだマシなのだろうけれど、日本代表をW杯で優勝させるための救世主を生み出すためなら本当になんでもやってしまうのか、これじゃあ金儲けを1番に考える幹部達と変わらないじゃないかと半ば呆れてしまう。

「私達のビデオ……ですか?」
「そ。いやー、なんかあいつらが予算使いすぎってうるさいもんでね」
「男優さんとか、呼ばないですよね……っ!」

この撮影に関して私が1番恐れたのは、アンリちゃんが他の男に触られ、脱がされてしまう可能性だ。もしそうなってしまった場合、私は冷静ではいられない自信があった。彼女が幼稚園時代に2人同時に告白されたときは好きじゃなかったからどっちも振ったらしいけれど、男の汚い手なんかに彼女が触られてたまるものか。
けれどそんな心配は無用だったようで、絵心さんは私の懸念に対して首を横に振った。

「あー、その心配ね?じゃ、2人で絡み合えばいいんじゃないの?」
「それ……って、」

つまり、アンリちゃんと合法的に絡めるということなのだろうか。
前言撤回、最高だ。むしろご褒美と言ってもいいかもしれない。けれど、彼女の方はこの提案についてどう思っているんだろうか――気になってちらと横を見ると、そこには顔を真っ赤にしながら俯くアンリちゃんの姿があって。恥ずかしそうな彼女とは対照的に最初から絡む気満々の自分が、逆に恥ずかしくなるくらいだ。

「せ、先輩と……!?いや、まあ……知らない男の人よりマシですが、女の人と……なんて、想像もつかないです……っ、」
「アンリちゃんは、私じゃ嫌……かな。やっぱり、男じゃないとダメ?」
「そんなことないです……!よろしくお願いします、先輩!」

かくして、私とアンリちゃんはカメラの前で絡み合うことになった。

***

向かい合って、指を絡めあって。
大好きなアンリちゃんとのキスは今までの誰よりも甘美なもので、身体の奥底まで熱を帯びていくようだった。私は王子様になんかなれないしアンリちゃんの方がむしろ王子様っぽい部分もあるけれど、それでも私はアンリちゃんに相応しい相手ではありたい。

「ね、これ見て興奮してる人見たら、どう思う?」
「どうでしょうか……私達で興奮していると知ったら、軽蔑してしまうかもしれません」
「んー……私も、」

絵心さんがビデオを送る相手はともかくとして、もしも絵心さんがこれを見て興奮していたら、私だって軽蔑してしまうだろう。
私はともかくアンリちゃんを汚い目で見るような男の人は嫌いだ、なんて――ビデオで映っているところでは言えないけれど、アンリちゃんのことが大好きだからこそ思ってしまう。

「**先輩も、ちょっとドキドキしちゃってますか?」
「してるよ。だって、大好きなアンリちゃんだもん」

お揃いのベビードール越しにアンリちゃんの胸元に手を伸ばすと、彼女はぴくりと肩を動かした。
私よりも大きいその胸に手を這わせると、私の心拍数も上がっていくのを感じる。彼女に触れているだけで幸せになれる私は、本当に安い女だと思う。
アンリちゃんの手が私の背中を撫で、やがて首筋に触れる。ぞくりとするような感覚に思わず身を捩ると、今度は狩野の方からも身を寄せてきた。
互いに互いの身体を弄りながら、何度も唇を重ねる。

「アンリちゃん……好き」

好きだよ、愛してる。そう囁きながら舌先で上顎を刺激すると、アンリちゃんはびくんと反応する。こういうことに慣れていないところも可愛いと思う反面、彼女とこうなる前に他の男なんかと行為に及んでしまった自分を心底後悔してしまう。本当は初めて同士がよかったけれど、開き直ってアンリちゃんをリードするしかないのだろう。
けれど、アンリちゃんは私だけのものだ。誰にも渡さない。アンリちゃんとこういうことができるのは、どうか私だけであってほしい。このまま、男の汚らしいものなんて、どうか一生知らずに生きていて。

「ぁ……**せんぱ……っ♡」
「アンリちゃん、可愛い。ずっとこうしてたいなぁ」

アンリちゃんの口内を犯しつつ、左手で彼女の胸の先端を刺激し続ける。右手は太腿の内側へと伸ばしてショーツ越しに秘部をなぞっていくと、腰を浮かせて甘い声を上げた。
彼女が私の手で感じてくれていることが嬉しくて、もっと触れたくて。そのまま指先を下へ下へと下ろしていき、彼女の大切な場所に触れた。

「んん……ッ!♡」
「ごめんね、痛い……かな、」
「だいじょうぶ……です、けど……ぅ、んっ……!♡」
「よかった。アンリちゃんのこと痛がらせちゃってたら、私絶対もう足向けて寝れないもん」

アンリちゃんに嫌われたくない一心で、ゆっくりと慎重に指を進めていく。濡れた下着を脱がせて直接触れると、そこは火傷してしまいそうなほどに熱かった。中を傷つけないように指を動かすたびに聞こえる水音が恥ずかしいのか、アンリちゃんの顔はさらに赤くなっていく。そんな彼女にキスをして誤魔化すと、私はさらに奥深くまで侵入させた。
指先がざらついた部分を掠めた瞬間、彼女は身体を大きく跳ねさせる。

「ひゃ……あ……ッ、そこ、だめ……っ♡」
「アンリちゃん……?ごめん、嫌だったらすぐやめるね?」
「ちが……やめないでください……ん……っ、ふあ、ぁ……♡」

未知の快楽に戸惑っているのだろうか、アンリちゃんは涙を流しながら首を横に振った。
私の手の中で乱れるアンリちゃんが可愛くて、いつもの凛としている表情だけではないいろんな表情を見たくなって。つい夢中で攻め立ててしまうと、彼女はあっという間に絶頂を迎えた。

「**先輩……っ、あ……あ……っ、ん……っ……〜〜っ!!♡」
「イっちゃった……?」
「は、はい……っ♡せ、先輩……これって、いけないこと、なんでしょうか……?♡」
「そんなことないよ。アンリちゃんの可愛い姿見れて、私は嬉しいんだから」

息を整えながら余韻に浸る彼女を抱きしめると、アンリちゃんも私の背中に腕を回してくれて。
ああ、幸せすぎる。アンリちゃんが私をどう思ってくれているかはわからないけれど、こちらは百合営業なんかじゃなくて本気である以上は撮影なんて関係なくて。撮影が終わったらアンリちゃんと、あとついでに絵心さんにも感謝しておこう――なんて考えながら、私はアンリちゃんにキスをした。