バベル

――ああ。
俺は、一体どこから間違えたのだろうか。

***

1年前の県大会、準々決勝。あの試合で右膝に怪我を負った俺は一時期入院し、退院後もリハビリや筋トレに励んでいた。
その甲斐あってか2年に上がった頃にようやく完治したものの結局レギュラーの座を取り戻せなかった俺は双子の先輩達になじられ続け、部活にも顔を出す気になれず、されど退部届を出す選択にも至れず。高校の通学途中で出会った黒猫にだけ弱音を吐き出す、そんな宙ぶらりんの日々を送っていた。

「……ん?」

その日も、いつものように黒猫に話しかけていた途中。明らかに俺と同い年くらいの少女が、一回りくらい年上と思われる男性と腕を組んで歩いていた。
私服姿だったから最初はわからなかったけれど、一瞬こちらを振り返って見えた顔は明らかにクラスメイトの**のもので。そのまま近くのラブホテルに入っていこうとする彼女を呼び止めたのが、全ての始まりだった気がする。

「……**?」
「あ……千切、くん……?」

彼女は驚いたように目を見開き、そのまま相手らしき男と別れてこちらに向かってきた。
曰く彼女の家は父子家庭であり母親は既に他界しているとのことで、生活費こそしっかりと――それこそ潤沢に送られているものの彼女が家に帰っても誰もいないことがザラらしく、その寂しさを埋めるために援助交際を繰り返してしまったのだという。 俺のところは厳格だから事情こそ違えど、父親とやや不仲なのは同じなようだった。
幸いなのかあの男からはお金はまだもらっていないらしく、そもそも彼女はお金目当てでこんなことをしているわけではないようで。ただ寂しくて、誰でもいいから傍にいてほしかったのだと言っていた。

「まあ、かといって、家に入れるほどそのおじさんを信頼してるわけでもないけど」
「……っ、だからって、」
「じゃあ、千切くんが来てくれるの?私の家」

どこか冷え切った、挑発的な視線と声。普段の俺なら――いや、相手が**でなければ放っておいたのだろうけれど、何故か俺は彼女を放っておけなくて。
気づけば、俺は首を縦に振っていた。彼女の家に行くと決めた瞬間から、心のどこかでもう引き返せないと悟っていたのだろう。

「私のこと、**って呼んでくれるならいーよ」
「……わかった」
「父さんや母さんの代わりに、いっぱい呼んで。ね、」

――豹馬くん。
そう俺を呼んだ彼女の甘ったるい声が、いつまでも脳裏に響いていた。



それからは、昼休みも放課後も**とつるむようになった。
いつのまにかあの先輩達は、日本フットボール連合だかなんだかの強化指定選手に選ばれたとかでこの高校を離れていって。俺がそれに呼ばれなかったのはブランク故なのだろうけれど、彼女と離れないでいられるならそれはそれでよかった。
ソファの上、彼女の隣に座る。昼食用にと買ったものの結局食欲がなく食べなかったのだという明太子おにぎりを受け取り、パッケージを開けて中身を頬張る。

「明太子でよかった?」
「ああ、サンキュ。むしろ感謝だわ」
「豹馬くん、明太子好きなんだ?」
「ん。ベストご飯のお供だと思ってるし、一本まるまるいけるくらい」

ふふ、と嬉しげに微笑む**につられて思わず口元が緩みそうになるも、それを誤魔化すようにペットボトルのお茶を口に含んだ。
どこか気怠げな表情、物憂げな雰囲気。おとなしめな顔をして、どこかアンニュイさを醸し出すような仕草。一見すれば地味に見える彼女だけどよく見れば整った顔立ちをしているし、スタイルだって悪くはない。何よりこうして家に招いてくれる程度には俺のことを好いている、俺はそれがたまらなく嬉しかった。

「ふふ、ひょーまくん……♪」

元々彼女自身の家とはいえ、無防備にも程がある。
学校では相変わらず互いに苗字で呼び合うようにしていたけれど、家で二人になった途端これだ。隣に座る俺の手をぎゅっと握りながら、肩にもたれかかってくる。
俺よりも一回り以上小さい身体を抱きしめたい衝動を抑えつつ頭を撫でれば、まるで俺が道端で出会ったあの黒猫のように目を細めて気持ちよさそうにすり寄ってきた。どこか危うい彼女の姿は、堪らなく庇護欲を刺激される。

「ね、豹馬くん。キス、したいな」
「……いいぜ。俺からも、したかったから」

唇を重ね合わせると、俺の舌を誘うかのように**の方からちろりと舐めてきた。誘われるがまま深く絡め合わせていくうちにだんだん息が上がっていくのか、漏れ出る吐息が艶めいたものへと変わっていき、それすらも愛おしくてたまらない。
やがてゆっくりと離されたお互いの唾液が糸を引き、ぷつりと切れる。上気させた頬ととろんとした瞳で見つめてくる彼女を再び強く抱き締めてやれば、背中に腕を回されきつく抱き返された。
――ああ。このまま、溶け合ってしまえればいいのに。
そう願わずには、いられなかった。

「豹馬、くん……♡」
「……どうした?」
「もっと、しよ……?」

熱に浮かされているかのような甘えた声で、**は俺の名前を呼ぶ。教室で見せているような大人しさはどこへ行ったのかというほどに艶やかな笑みを浮かべていて、そのギャップにくらりと眩惑されてしまう。
そのまま彼女は俺の制服の学ランを脱がせ、シャツのボタンを外してきて。脱がせようとしているのだと気づいた時にはもう遅く、露わになった上半身に彼女の手が這っていく。

「っ、おい……!」
「ふふ、かわいー……豹馬くん、感じやすいんだね?」
「……お前は、こういうことに慣れてるんだな」
「知ってるくせに」

くす、と妖しく笑う**に、どきりと心臓が高鳴る。
彼女が初めてではないことなどとうに知っていたし、今更それについて何かを言うつもりもなかった。けれど、彼女は俺以外のどんな男と肌を重ねてきたのだろうか――そんな疑問が脳裏に過ってしまう。
幸いというべきか俺とこういうことをする関係になってからは援助交際もパタリと辞めたらしいし、事実今こうして目の前にいるのだからその心配はない。それでも過去に彼女に触れた男がいるという事実だけで胸の奥底でどす黒い感情が滾ってくるのだから、やはり俺は彼女のことが好きになってしまっているのだろう。

「んー……豹馬くんは、あったかいね……」
「**だって相当だろ、」

ソファの上に押し倒し、覆い被さるようにして**の身体に触れる。柔らかくて、温かくて、俺よりだいぶ華奢な身体。まだどこか幼さの残る顔立ち、小柄ながらもしっかりとした骨格。少し汗ばんだ首筋に顔を埋めればシャンプーかボディソープかの甘い香りが漂ってきて、それに酔いしれるように深呼吸をした。
そっとセーラー服の中に手を入れ、脇腹を撫で上げていけばぴくりと反応を示してくれて。それに煽られるように、どんどん行為はエスカレートしていった。

「ぁ、んん……っ、」
「よしよし……大丈夫だからな、**」
「ぅん……ひょーまくん、すきぃ……♡」

頭を撫でながら名前を呼んでやると、幸せそうな笑顔で俺を見上げてくる。
――ああ、本当に可愛い。可愛すぎて、どうにかなりそうだ。
本当に彼女が求めていたのは恋人ではなく父性なのだろうけれど、それを理解した上で俺は彼女の側にいると決めたのだ。最初はただの同情だったはずなのに、互いの傷を舐め合うだけの関係だったはずなのに、今ではすっかり彼女の虜になっている。
もっともっと、**に溺れたい。彼女の手を取って、一緒にどこまでも堕ちていきたい。それがたとえ地獄だとしても、この壊れかけの右脚ではろくに抜け出すこともできないのだろうし、もういっそのこと堕ちていこうじゃないか。そうすれば、きっと二人でいつまでも一緒になれるはずだ。

「ね、もっと触って?豹馬くんの手で、私をめちゃくちゃにしてよ……っ、」
「ああ、いくらでも気持ちよくさせてやるから……」

ショーツ越しに割れ目をなぞり上げるように指を動かせば、そこは既にぐしょ濡れになっていて。軽く擦っただけでもびくびくと身体を震わせている。
耳元に口を寄せ、低く囁いてやるとそれだけで感じるのか小さく喘ぎ声を上げながら腰を揺らしていた。
普段は大人しい文学少女といった雰囲気の**だが、ベッドの上では驚くほどに淫らになる。恥ずかしがるどころか自ら脚を開いてくるし、キスを強請ってくるし、挙句の果てには自分から下着を脱いでくる始末。脱ぎかけのセーラー服や乱雑に脱いだストッキング、そして愛液でべっとりと汚れた下着がまた何とも言えない背徳感を醸し出していて興奮してしまう。

「豹馬くん……早く、ちょうだい……?」

熱に浮かされたような表情、甘えるような声。俺の言葉に応えてくれる**の瞳はどろりと濁っていて、もう何も映していない。
ああ、このまま壊してしまいたい――そんな衝動に駆られつつ彼女の秘部に触れれば、そこは待ち望んでいたかのように蜜を溢れさせていた。そのまま指を奥まで沈め、とうに知り尽くした彼女の弱いところを執拗に攻め立ててやると、俺の服に縋りつくようにしながら必死に快楽に耐えようとしていた。

「ぁ、あっ……!豹馬、くんっ……もっと、もっとぉ……♡!」
「ここ好きだよな、**は」
「ん、好き……っ、だから、いっぱいして……♡」

普段の彼女からは想像できないほどに艶やかな声で、**は俺の名前を呼んでくれる。俺だけが知っている、俺だけに見せる姿――それが堪らないほどに嬉しい。
とろんとした顔でこちらを見つめてくる彼女を優しく抱き締め、深く唇を重ねて舌を差し入れていく。それと同時に膣内に収めたままだった指を増やしつつ、再びナカをかき混ぜ始めた。

「ふ、ぅう、ん……♡ふ、は……あぅ、んむぅ……ッ!♡」
「っ、は……**……!」
「ぁ、あー……豹馬く……ひょーまくん……っ♡」

お互いの名前を呼び合い、貪るように何度も角度を変えて口づけを交わす。舌先が絡み合うたびにぴちゃぴちゃという水音が響き渡り、頭がくらくらしてくる。息継ぎをする暇すら与えないほどの激しいキスのせいで俺まで上手く呼吸が出来なくて苦しいはずなのに、それでも**とのキスをやめたいと思わない。むしろずっとこうしていたいという欲ばかりが募っていく。
――ああ、本当に可愛い。
普段はお淑やかで清楚な見た目をしているのに、ベッドの上だと驚くくらいに乱れてしまうところも可愛いし、こうして積極的に求めてくるのも可愛くて仕方がない。黒猫のようにすり寄ってきて、甘えた声で名前を呼ばれてしまえば、もう我慢なんて出来るわけがなかった。

「んん、ん……っ、ひょーまく、いっちゃ……んぅ〜〜〜っ!♡」

絶頂を迎えたと同時に、名残惜しそうに俺の指をきゅうっと強く締め付けてくる。それに抗うようにしてゆっくりと指を引き抜くと、**が小さく声を上げた。達したばかりの彼女の顔はとても扇情的で、思わずごくりと生唾を飲み込んでしまう。
潤んだ瞳で見つめられるまま、誘われるがまま。 とろけきった秘部へと、熱く猛ったそれの先端を押し当てて――そのまま一気に最奥目掛けて貫いた。

「ひょーま、く……っあ、あ―――ッ!!♡」

どちゅっと鈍い音を立てながら子宮口に亀頭を叩きつけた瞬間、**は悲鳴のような声を上げる。大きく背中をしならせながら身体を大きく痙攣させている様子から察するに、どうやら挿れただけで軽くイッてしまったらしい。挿入した状態で小刻みに腰を動かせば、その度に甘い声を上げて俺のモノを強く締めつけてきた。
温かくて柔らかくて、ぬるついていて理性ごと溶かされるような快楽を与えてくれて、気を抜いたらすぐにでも果ててしまいそうになる。それを何とか堪えてゆるゆると抽送を繰り返していると、不意に**の腕が伸びてきて首の後ろに回された。

「ひょーまくん、もっと……もっろ、して……♡たりないの……っ♡」
「ああ、わかった……!」

叫ぶような意味を持って耳元で囁かれた言葉に応えるようにして腰の動きを早めれば、**は嬉しそうに声を漏らす。そうして脚を絡めてきたかと思えば、ぎゅうっと身体を抱き寄せてきた。
腰を打ちつけるたび、結合部からはぱちゅんぱちんと卑猥な音が響いて。温もりに飢えた黒猫のように、必死に名前を呼びながら俺にしがみついてくるのが堪らない。

「は、あ……♡豹馬くんっ……♡」
「ん……?何だ?」
「ちゅー、したい……♡豹馬くんとちゅーしながらイきたいっ……♡」
「**は本当にキスが好きだな……いいぜ、いっぱいしよう?」

俺の返事を聞くなり、**は幸せそうな笑みを浮かべて唇を重ねてくる。触れるだけの軽いものから次第に深いものに変わっていき、お互い夢中になって舌を絡ませ合った。
その間もぐじゅぐじゅと厭らしく音をたてながら激しく突き上げていけば、その度に彼女はびくんと身体を跳ねさせて悦んでいるようだった。

「んっ……ふ……ぅう……!♡んぅ……っ!♡」
「はぁ、っ……**……!」
「ぁ……豹馬くんっ……♡ん、ん……っ!♡」

何度も何度も、飽きることなく。まるで互いの存在を確かめるかのようにして、ひたすらに口づけを交わし合う。その間にも俺は律動を止めず**の最奥を突き続けていれば限界が訪れたのだろう、膣内がきつく締まった。
そんな彼女に俺もまた限界を迎え、そのままゴム越しに欲望を注ぎ込んだ。