掬われて、救われた
※轟くんが2人います(ifろきは『』)
※前半薄暗い&捏造多め
※キャラがぶれているかも(特にifろき)
※文章がまとまってない
かなり好き嫌いを選ぶ話なので、苦手だと感じた方は即ブラウザバックをお願い致します。
少女は唄う。
*
「…あんたさあ、いつまでも私をここに閉じ込めるつもり?」
狭いケージの中。ショート、とだけ名乗る彼に私は買われた。
どうやら彼は父親であるプロヒーロー・エンデヴァーに幼い頃から厳しい訓練を施されてきたようで、影を吹っ切れず父親のように育ってきた結果そういう性格になってしまったらしい。
違う誰かに出会うことができれば吹っ切ることもできたかもしれない――なんて、私が言っても仕方ないけれど。
私も、彼にはまず私の個性に目をつけられた。とはいえ流石に彼自身が個性婚をするという考えには至らなかったようだが、その代わりというのか度々私をとあるイベントに参加させる。
最初こそあのエンデヴァーの息子がこんなことをと騒がれたが、彼はそんな言葉に耳を貸さないままヒーローともヴィランともつかない道に足を踏み入れているのだ。
『いつまでも?…さあ、どうだろうな』
「そう?まあ、私を生かしてくれるんならどうだっていいけどさ」
だって、ねえ。
私の羽を部分的に切ったのは、逃げ出さないように――なんでしょう?
***
とあるイベント、というのはこの『鳴き合わせ会』のことだ。
本来はメジロの鳴き声の美しさや回数の多さを競うものなのだが、個性の一般化が進む現代では私のようなその道の個性を持つ人間で競われるようになっていた。
優勝すると高額で取引され、暴力団の資金源となっていたという――私にどのくらいの値打ちがあるかなんて知らないけれど。
私は狭いケージの中、視界は布で覆われている。明るい所に出すと鳴く私の本能に訴えかけているのだ。
同じような目的で集まった人々の声が聞こえたので、もうここは会館なのだろう。
「〜〜〜〜♪〜♪」
3分間の間、私は唄う。
何回、なんて覚えられない程に。
時々身体が焼けるように熱くなった時は、彼の個性で冷やしてもらいまた唄い続ける。そして、またいつも通りに点数をつけられて――そんなイベントの繰り返し。
それが、続くと思っていた。
けれど――
「――逮捕する!」
いきなり扉が開けられ、警察らしき人が複数乗り込んできた。この鳴き合わせ会自体が違法なものだったらしく、参加者の中には秘密裏に拉致した上で愛好家の下に送っていたヴィランもいたという。乗り込んできた人々の中には、捜査に協力したというヒーローもいて。
――その面影は、あまりにも『彼』に似ていた。
『お前は…』
「どうやらこっちの『俺』は、緑谷と出会ってなかったみてぇだな」
ショートさんと、さっきの人が何やら言い争っていた。
どうやらさっきの人は並行世界かどこかのショートさんで、『ミドリヤ』という人との出会いで大きく変わったらしい。
「次そういう奴が出来たら、今度は大事にしてやれよ」
『なんでだよ!なぁ…引き離さないでくれよ…っ!』
「…というわけで、こいつはこっちで保護させてもらうぞ」
彼の言う『そういう奴』が何を指すのかはわからないが、文脈から察するに『側に置いている奴』などの意味合いなのだろう。
――そうか。私、これから保護されるんだ。
――今まで一緒にいたショートさんとは、もうお別れなんだ。
「ショートさん…悪いけど、あんたのところ離れることになったみたい」
『おい…**までそんなことを言うのか?』
「まあね。私は新しいところでなんとかやるからさ、ショートさんも元気でいてよ」
「――今までありがとね、楽しかったよ」
そうやって私は振り返らずに歩き始める。
私の後ろで膝をつく彼も、いつか私のように救われることを信じて。