戦略的交際

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※夢主は監督生ではありません。他校の生徒です。
※夢主と♥の間に今のところ愛はありません。

***

どうしても、負けたくない人っている?
私にはいるのよ。

だから――手段なんて、選んではいられないの。


 
同級生で、学年主席のあいつ。
私のライバルでもある彼女に同い年の彼氏ができたと知ったのは、つい最近だった。あいつがマジカメにアップした画像に写っているのが、その『彼氏』なのだとか。

「その人…あのナイトレイブンカレッジに通っているのね」
「そうよ。デュースはいつも一生懸命なんだから。要領悪いけどそこが可愛いんじゃない」

『彼氏』――デュース・スペードというらしい――の学校は、かなり有名な魔法士養成学校だった。聞くところによると、その彼にもライバルがいるそうだ。そこにタグ付けされている、彼のものと思わしきアカウントに飛んでみる。

「なんだ…あっちにも、ライバルいるんじゃない」

遡っていくと、デュースのライバルらしき人――エース・トラッポラというらしい――が写っている投稿を何個か見つけた。
茶髪に赤目、赤いハートのペイント。
シャツの第一ボタンとジャケットのボタンが開けられた制服。
しかも、投稿によると恋人が今のところいないことを気にしているようだった。というのも彼には元々彼女がおり、別れてから男友達と馬鹿やってる方が面白いという結論に一旦はなったものの、デュースに彼女ができたことを知ると途端に劣等感を感じ始めたらしい。

「決めた……!」

彼と、接触を図ってみよう――と。
あいつからデュース自身を略奪することも一度は考えたが、その場合、いざ私が本気で誰かを好きになった時に同じ手段を取られかねない。そうなってしまうくらいなら、デュースのライバルである彼に話を持ちかけた方が絶対にダメージは少ないだろう。
それに、そんな手段は自分のキングを最初からチェス盤外のどこかに摘み出しておくようなものだ。私はあくまで正々堂々、同じ条件であいつに挑みたいんだ。

使用人を呼び、いくつか頼みごとをする。

「明日なら、私の予定は空いているわね。…ねえ、」
「如何致しましたか?」
「ナイトレイブンカレッジ全体のとそこの1年生、ハーツラビュル寮とバスケ部…とにかく彼が関わりそうなところには全部アポイントメントを取って、明日がだめならば代わりの予定を聞いておいてちょうだい。あと、差し入れが禁じられていないかどうかも確認してくれるかしら」
「…畏まりました」

こうして、外堀を埋める準備はできた。
あとは明日彼が欠席などしていなければ、予定通り事を進めるだけ。

本気で好きな人とじゃないと、幸せになれないって?
何を言っているの。
あいつに負ける以上の不幸なんて、ないのに。

「待ってなさい。…すぐに迎えにいくわ」

***
 
翌日。
学校帰りの私は、早速使用人に頼みナイトレイブンカレッジ前で車を停めさせる。1人なら箒でもよかったのだが、それでは魔力を持たない使用人は連れていけないからと私が車を選んだのだ。
向こうも丁度授業が終わったようで、門の前から目元にハートのペイントを施した生徒――エースが歩いてくるのが見えた。

「ねえ、そこの茶髪の子。ちょっといいかしら」
「ん?茶髪って……オレ、だよな」
「そう、貴方よ」

呼び止めれば、彼はすぐに反応してくれた。
物珍しさからか私達に目を留めるものも少なからずいたが、気にせずに彼の元へと足を進めていく。

「エースといったわね。貴方に提案があるの」
「……はい?」

赤いベストが少し邪魔だが、そこからなんとかストライプ模様のネクタイを引き出す。
そして、ぐいと強めに引いて唇を重ねた。

「私と、付き合ってほしい」



いきなりのことに戸惑う彼を車に乗せ、静かな場所へと誘導する。勿論、学校関係者やハーツラビュル寮の寮長には事前にアポイントメントを取ってあるので、何かを言われることはないだろう。彼の所属先のバスケットボール部も、今日は休みなようだし。
こちらのフルネームと年齢を言えば彼も同様に名乗りかけ、そしてそれを撤回した。

「お、おう。オレは…って、知ってるか」
「勿論よ、そうでなきゃ声なんてかけないわ。…貴方、デュース・スペードのライバルなんでしょ?」

問い質せば、何かを思いついたかのような笑みが返ってくる。
それを見たところ、彼に拒絶の意思はなさそうだ。

「へぇ……それで、付き合おうと?」
「そうよ。…嫌、かしら」
「いや、むしろ好都合ってやつ。あいつの時みたいに価値観の違いで別れるのはもう嫌だけど、お前とは合いそうだしな。それに…」

言いかけた言葉が気になって、じっと見つめてみる。
そうすれば照れたのかふいと顔を逸らし、聞こえないようになのか小声で呟いた。

「…その、たまたま好みだったし……」
「よかった。受け入れてくれるのね?」
「あ……ああ!」

聞かなかったふりで念を押す。
彼は照れ隠しのつもりなのか、強い勢いで肯定した。

「ありがとう。じゃあまた明日会いましょう、『エース』」
「…じゃあ、オレも『**』って呼ぶってこと?」
「あっ、当たり前でしょ!付き合うんだから…」

連絡先を交換し、彼の好物であるチェリーパイを渡して見送る。
さて…上手くいくといいのだけれど。