焦がれの行方
※少々環ちゃんを下げる表現、および匂わせ程度の性的表現がございます。苦手な方はご注意ください。
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今でも、脳裏に焼き付いている光景。
それは手元の炎の仕組みも知らずにあつい、あついと泣き叫ぶ私を、神父様が強く抱きしめてくれた時のこと。
『もう大丈夫だ。しばらくはここにいてくれ、なっ☆』
『……はい、』
施設に連れて行かれ、ふわりと手を離されれば緊張の糸が切れて座り込む私。
しばらく親には会えないと言われたが、それでも構わなかった。私の手元の炎を見た時から気持ち悪いと離れていってしまった親の元よりも、神父様のところの方が何倍も温かい気がした。
焦がれる、とはきっとこのような感情を言うのだろう。
――神父様。
熱くて強くて眩しくて、不器用だけど優しい神父様。
私の大好きな、神父様――
***
あれから私は白い頭巾を被れるまでになった。伝導者のことはよくわからないが、神父様のところにいたい一心で従っている。
「……神父様っ、」
神父様の部屋に忍び込み、寝ている彼の唇に噛み付いてみる。
私の行動に気づいた彼は一瞬驚きはしたものの、すぐにいつも通りの反応を返した。
「うぉ、**!?……全く、『神父様』じゃ誰だかわからないだろー?ちゃんと名前で呼べって、いつも言ってるぜ☆」
「誰だかって……ここには貴方と私だけですよ?」
本名や他の神父の存在を知っても、なかなか星宮さんとは呼び慣れない。それで今みたいに注意されたこともある。
でも仕方ないじゃない、私にとっての神父様はひとりだけなのだから。ましてや、ここには私と彼だけ。誰とも呼び分ける必要なんてないでしょう?
「ま、いっか☆それよりどうした、こんな時間に」
部屋に来ようが口付けをしようが、貴方の顔は普段周りの前で見せるものと何も変わらない。きっと、私のことも他の人と同じに見ているのだろう。本当に、鈍感なんだから。
それでもいい。私は私の中でぐらぐらと滾るこの想いを――熱をぶつけるだけ。熱い人間が好きな彼なら、きっと受け止めてくれるだろう。
「神父、さま……っ」
「……**?」
「お願いします、お側に……お側に置いてください……っ、」
再び距離を縮めて、ベッドに寝たままの彼の手首を掴む。
向こうの消防隊で中隊長になってしまうくらいの彼の力なら、簡単に振り払えてしまうだろう。それでも振り払わず押しのけもせず、ただ私に向き合ってくれる――こんな時でも、貴方はいつも通りなのね。
「おいおい……いきなりどうした、不安になっちまったのか?」
「その、何があってもお慕いしますから……裏切ったりなんて、しませんから……っ」
そう。この先何があろうと、私は彼を慕い続けるつもりだ。あの日の思い出が私を騙すための真っ赤な嘘で作られたものだとしても――本当は私を『助けた』のではなく『攫った』のだとしても、構わなかった。
今なら、このままふたりだけの世界で全部燃え尽きてしまえばいいとさえ思える。だって、この星はいつか第二の太陽になるんでしょう?
「ねえ……だから、神父様……」
「ん、どうした?」
「どうか、私を……私を、選んでください……っ!」
私の瞳から流れた涙が、彼の顔にぽたぽたと垂れる。それに気づいた彼は涙を拭うように目元に触れた。
目の前の彼の瞳の中では、相変わらず五芒星が煌めいている。
「……**、泣くな。大丈夫だから」
「っ……神父、さま?」
「お前は、俺のことそんな風に想ってくれてたんだな」
煌めきを増した瞳で、じっと見つめてくる。
ぽんぽんと頭を撫でる手の優しさと、普段より落ち着いた口調で紡がれる言葉が、私の胸にじんわりと染みていく。
そうか――応えてくださるんだ。やっと、お側に置いていただける。神父様を慕っておきながら簡単に気持ちを変えてしまうようなあの子じゃなくて、私を選んでくださるのね。
「そんなに熱い想いをぶつけられたんじゃ……応えるしか、ないよな」
ああ、もっと早くこうしておけばよかった――なんて早合点したままぼんやりと幸せに浸っていれば、もう片方の手で彼の方に引き寄せられた。
神父様の思いもよらない行動に動揺している私に構わず、そのまま視界は彼の手で反転する。
「わっ……何、を」
「どうした、**が始めたんだろ?」
先程私がしたのと同じ、噛み付くような口付けを落とされる。
確かに私が始めたことで間違いはないのだが、まさか同じことをされるとは思っていなかった。けれど、決して嫌ではない。たった一晩だとしても、彼の側にいられるのだ。拒む理由など、あるものか。
「ぁ……神父、さま」
「今更『待って』とか言われても聞かないからな。お前もしっかり受け止めてくれよ、**?」
「はい、どうか神父様の……烈火さんの好きなように、」
星を映して、影を重ねて。
そうしてふたり熱に身を焦がした、その先は――