珈琲とミルクティー

苦いのは嫌いだ。
義手を持つ部下の彼――宜野座くんならば何も入ってないままで飲み干せていたであろう珈琲は、私には少し苦すぎる。

そんなわけで、今日もいつも通りに自販機のミルクティーを買う私。

「**じゃないか。今日もそれなのか?」
「まあね。……っていうか、宜野座くんには関係なくない?」

彼はこうやって、朱ちゃんや美佳ちゃんにするように私をも揶揄ってくる。
だからなんだという話だが、その度にどこかくすぐったい感覚を覚えてしまうのは何故なのか。

「いつもそれで、**は飽きないのか?」

飽きていない、わけではない。
ただ他のものに迂闊に挑戦して嫌な思いをしたくないから、結局は定番に落ち着いてしまうというだけだ。
そんなことは彼には関係ないのに何故訊いてくるのだろう……と少し苛立ちつつも、ここで怒りをぶつけてしまうのは喧嘩に発展してしまうかもしれないと思い、聞こえないくらいの声で呟く。

「そんな……そんなわけ、じゃない……けどっ」

それが彼の耳に入ったのか、まだ開けられていないコーヒーの缶が私の頬に当たる。

「なら、一口飲むか?」

思いがけない提案。
戸惑いのままに、こちらも口を開く。

「……なんで、」
「**が思っているほど苦いものじゃないから、これならお前も飲めるだろうと思ってな」

つまり、間接キスをしようとでも言いたいのか。私達はただの上司と部下であって、そういう関係ではないのに。
赤く染まる頬を見られたくなくて、顔をそらしつつ問う。

「本当に?本当に苦くないんだよね?」
「ああ、俺が保証する」

その言葉をとりあえず信じることにした私は、お返しとばかりに自分のミルクティーを彼に渡した。