大事にしたいんだよ、だから
「**、今日は何もされなかったか?」
宜野座くんが、心配そうに見つめてくる日。
「**、あの時潜在犯に暴行受けていただろう。急いで向かえばよかったな」
宜野座くんが、息ができなくなるほど抱き締めてくる日。
「**、これ以上色相が悪くなったら……!」
宜野座くんが、既に覚悟している執行官堕ちを必死に止めようとしてくる日。
そんな日々の繰り返しが嫌になって。
切り出したのは、私からだった。
***
「**、今日は……」
「何もなかったけど、」
「よかった……何かあったらと心配したんだぞ?」
宜野座くんは今日も私のことをいちいち気にして、そうやって伺ってくる。
それは彼の不器用な優しさからくる心配であることも、彼が私のことを大事にしているが故にこうしているのだということも、頭ではちゃんとわかっている。
けれど。
その優しさが、私には苦しかった。
彼にそう思わせてしまっている私がいる、という事実が憎かった。
それを突きつけられる瞬間が来る度に、つらかった。
私には何もできないと、監視官としてこの世界を守るに値しないと――そう、宣告されているようで。
ずっと押さえていた感情が、私の中で溢れて。
言葉よりも先に出たのは、彼の頬を引っ叩いた右手だった。
「――ねえ、なんで?なんでいつもそうなの?」
目の前の宜野座くんは手を避けることもせず、口をぽかんと開いていた。
こう切り返されるとは、流石に思っていなかったのだろう。いや、私に怒られること自体が彼の想定になかったのだろうか。
「それは……それはお前が心配で、失うかと思うと不安で……」
「いい加減にしてよ!私だってちゃんと監視官として仕事できるのに、いつもいつもそんなに心配ばっかりして!それって、私一人じゃ何にもできないって言ってるのと変わらないじゃん!」
反論はしつつもなおも圧倒されたままなのをいいことに、止まらないままの勢いで怒りをぶつけ続ける。これを世間では喧嘩というのだろうか。思えば意見がぶつかりそうになっても私達のどちらかがいつもすぐに折れているせいか、こういう喧嘩なんて今までしたことはなかった。
全て言い終えた後、彼はきつく抱き締めてきた。
「……すまない」
「え、宜野座……くん?」
「**を大事にしすぎるあまり、いつの間にか信頼しきれなくなってしまっていたんだな……これからはお前が一人でできると信じてみるから、だから……っ」
私の着ているスーツが、密着している彼の目から溢れる涙で濡れていく。
心配せずにいられないということは、裏を返せば信じきれていないということにやっと気づいてくれたようだ。
「……いいよ」
それでもいい。
今こうやって心配という枷を取り外し、信頼を取り戻せたのだから。