甘い誘惑蕩ける魅惑

「……チカ?」

彼――チカは紅茶入りのカップを私に持たせる。曰く、ブランデーを垂らしたこれが美味しいのだと。
今は免除されているとはいえ監視官の私にブランデーを飲ませるのは少し躊躇したようだが、今はそのようなことはどうでもいい。
――これからの、私の状況に比べれば。

「飲んでも……いい、の?」
「ああ。これもいいぞ、」

与えられたその紅茶を、カップの半分程飲む。
アルコールが入っているからか、徐々に身体が熱くなっていった。

そんな私をよそに彼はボンボンが載った皿を私の前に置き、右手でそのうちの一個を摘む。流石に手袋がされた左手で摘むわけにはいかないので、まあ妥当といえるだろう。

「口開けて…そう、咥えて、」

言われるがままに、チカの指ごと咥える。
そのうちにアルコールは段々と身体に回っていき、ついにふらりと姿勢を崩すまでになってしまった。

「……っと、大丈夫か?」
「熱いの…っ、楽にして…!」

強請るように袖を引けば、溶けきっていないそれを摘んだままの右手が私の上唇を擦る。
はやく、はやくらくにしてよ。

「まだだ、**」
「……ちー、か?」
「ご褒美は、これを溶かし終えてからな、」
 
楽になってしまいたい一心で、それを摘む指に舌を這わせる。
溶かし終えてからと言いつつも、実際はその後指に纏わりついた分を舐めきるまでは楽にしてくれないのだろう。彼はそういう人物だ。

「ん…いい子。偉いな…」

手袋を纏った左手で、よしよしと後頭部を撫でられる。
その手はひどく優しいけれど、考えてみれば頭を押さえられているも同然で、口を離すこともできない。

その状態が5分くらい続き、全て舐めきった後。

「…よくできたな、」

ようやく、指を離された。
チカの指と私の口を、銀色の糸が繋ぐ。

「……っ、」
「じゃあ、ご褒美な。手を洗ってくるから……残り飲んで待ってなさい、」

彼がべたべたの左手を洗いに行ったその間に紅茶のもう半分を飲み干した、その頃には力が抜けて姿勢が崩れるどころか遂にベッドの上に倒れ込むまでになってしまった。
当たり前だ。既に頭も身体も熱りどろどろに蕩けているところに、さらに追い討ちをかけたのだ。

「……押し倒すまでもなかったな、」

戻ってきたことを知り、彼を見上げる。
注がれる熱い視線とは裏腹に、顔をなぞる彼の手がやけに冷たく感じるのは、きっと洗ったからだけではない。

「大丈夫だから、安心して。……ちゃんと、楽にしてやるから、」

この先の状況は、ちゃんとわかっている。
彼から与えられる蜜に、ただ呑まれるのみだということを。