夕暮れロマンチカ

電車の中、座席の上。
カタンコトンという揺れに誘われ、私を寝過ごさせてしまうかと思われたほどの眠気は、肩に何かが当たる感覚で途切れかけた。
恐る恐るその感覚がした方を向くと、高校生くらいの少年がいた。

「……あ、すみません。肩……当たりましたよね、」

礼儀正しく私に謝ってくる彼の名前は知らないが、その額が出ている髪型と眠たげな目つきだけはどこかで見たような気がする。
確か、ボーダーの子だったか。
ボーダーと学業との両立が大変なのは、私でも薄々わかる。

「大丈夫だよ、寝過ごす方が嫌だし。……って、君は?」
「村上といいます。……その、降りる駅になったら起こしましょうか?」

先程の件を引きずっているのか、眠るであろう私を起こしてくれるとまで言ってくれる彼――村上くん。
一応私の目的地を出し、尋ねる。

「えっと、四塚市の方なんだけど……君はそこまでいてくれる?大丈夫?」
「こちらの目的地はその先なので、問題ありません」

どうやら、問題はなかったようだ。
その事実に胸を撫で下ろしたかと思えば、再び私の肩に体温が載る。

「……ん?」

隣を見ると、彼が再び寝始めた。
先程話してくれた時も、眠気をなんとか抑えながらだったのだろう。

――まあ、いいか。駅に着くまでに起きられれば。
もし寝過ごしたとしても、終点では否が応でも起こされるだろうし。それに、隣の席には私を起こしてくれる人だっているのだから。

「ま、いっか。私も寝よう……」

そのまま私も村上くんもぐっすり眠ってしまい、2人揃って終点で駅員さんに起こされたのは別の話だ。