カレイドガールシーケンス

例えば万華鏡のように、自在に連続して表情を変える。
俺は、そんな女の子が好きなのかもしれない。

***
 
卒業式の日。
最後のけじめとばかりに葉子ちゃんに告白したはいいものの、好きな人がいるとのことで振られてしまったのだ。別に今言わなくても葉子ちゃんとはボーダーで会えるのに、学校で会うのが最後だからと思うといてもたってもいられなくなって。
どうせこうなってしまうのがわかっているなら言わなければよかったと、今では自分の行動を少し後悔している。

止まらない涙を抑えつつ少し俯き気味に歩いていると、同級生の**さんと衝突してしまった。彼女は頭をさすりながら、苦い顔をする。
当然だ。俺がショックのあまり前を見れていなかったからだ。

「痛っ……て、三浦じゃん」
「わ、ごめん……痛かったよね、」
「別にいいよ。それよりさ、」

ありがたいことに、**さんはすぐに俺を許してくれて。ぶつかったことなんて忘れてしまえとでもからかってきそうな、そんな笑顔を取り戻した。
――よかった。いつもの**さんだ。

「あんた、葉子ちゃんのとこ行ったんじゃなかったの?めちゃくちゃ落ち込んでんじゃん!」
「そうなんだよね……」
「よかったら、話聞こうか?ベンチとか行く?」

どこかで見ていたのか、俺が葉子ちゃんと話していたことを**さんも知っているらしい。とはいえ、話し声まではさすがに聞こえていなかっただろう。

「うん……聞いてくれる、かな」

彼女の言葉に甘え、学校のベンチ近くに移動する。
葉子ちゃんとのやりとりのことを話し始めても、彼女は決して俺を責めることはなかった。

「……なるほどね」
「そうなんだよ……」
「まあ、一回振られちゃうとね……それ以上に好きな人見つけるのって、どうしても難しいよね……」

責めるわけでもなく、かといって宥めるでもなく。
ただ、彼女は寄り添ってくれていた。

そんな優しい**さんに惹かれていく俺が、顔を出す。
相談に乗られただけで他の女の子に簡単に乗り換えるような、弱い自分。
もしろっくんがここにいたら、お前がずっと燻らせてきた葉子への想いはその程度で変わっちまうもんだったのかよと怒鳴りつけてくるだろう。

でも、仕方ないじゃないか。
振られて弱っているときに、あんなに優しくされたのだ。靡くな、なんて無茶を言われても困る。

とりあえず礼を言おうと、顔を上げ**さんを見る。

「……ありがと。**さんのおかげだよ」
「よかったじゃん。次の相手、探せそう?」
「うん……もう、大丈夫」

見守るように、伺ってくる彼女。
もう大丈夫と胸を張って言える理由、それはひとつだけでいい。

「次の好きな人は……さっき、見つかったから」
「そう、大丈夫ならよかったね……って、えっ?」
「うん……君のこと、好きになったかも」

まだ葉子ちゃんの時ほど好きになれるかはわからない、けれど確かに芽生えたこの感情を吐露すれば目の前の**さんはそれを相談したときと同じ顔のまま聞いていた。
かと思えば、途端に口をぽかんと開けて驚きを体現する。無理はないだろう。彼女からしてみれば、失恋の相談に乗り終わったところで、今度はいきなり好意をぶつけられたのだ。驚くどころか、軽いと揶揄されて然るべきだ。

「……やっぱり、だめかな」

切り捨てられるかもしれないとわかった上で、問う。
けれどそんな俺を**さんは切り捨てることなく、先程の優しい彼女のままで受け入れてくれた。

「だめじゃないよ」
「**、さん……?」
「実はさ、あんたが振られたの……ちょっと、嬉しかったんだよね」

そう切り出した**さんは少し申し訳なさそうな、けれどどこか嬉しそうな顔をしている。
語るところによると、彼女の方もずっと前から俺に惹かれていたらしく、今回葉子ちゃんに振られたと知って安心していたとのことだ。

「性格悪い……って、思うでしょ?」

確かに、性格悪いとは思う。
というか、自覚した上で慰めていたのかと思うと、ずるい。

けれど彼女は、こんな形とはいえ俺を受け入れてくれた。
しかも、結果的には両想いだったのだから。

「……うん、確かにずるいね」
「やっぱりね。そこは私も自覚するわ」
「でも、好きになったってのは本当だから……」

そう告げると、また**さんは表情を変えた。
今度は、満面の笑みだ。

「ありがと。じゃ、とりあえず付き合う?」
「……いいよ、」

ベンチから立ち上がり、手を繋いで最後の校門を出る。
**さんの手を離したとき、帰路に着くとき、次に会ったとき――彼女はどんな顔をするのか。それが、今から楽しみで。
何も言わない代わりに、俺はぎゅっと彼女の手を握りしめた。

お題 ▶ スロットメーカー「電球のワ妄想スロ」様より。