最後にとっておいてもいいよ
訓練の後。
たまたま出会った三浦先輩に、俺はあることを相談していた。
「あー……確か、付き合っている先輩がいるんだったよね、」
「そうなんですよ……何か教えていただけたらなぁ、と……」
「うーん……俺の好きな子は年下だから、役に立たないと思うよ?」
そう――俺は、交際相手である**先輩との進展について絶賛悩み中だ。
彼女は俺に構ってくれるし、面倒を見てもくれている。それが嬉しくないわけではないのだが、どちらかというと弟的な可愛がられ方ととれるのが少し気掛かりで。
そもそもどうして先輩に惹かれたのだろうと自分でも思うが、それは彼女が美人で明るい、好みのタイプの女性だったからだ。自分よりも世間を知っている年上女性と一緒にいれば自分が今まで経験したことのない大人の恋を楽しませてくれる、とか。年下や同年代の恋愛には物足りなさを感じている、とか。そういう、年上女性を好きになるときにありがちな願望からではない。
ただ、好きになった相手がたまたま自分より年上だっただけ。
一応は付き合っている、それなのにこうやっていつまでも歳の差を突きつけられてばかりいるのは納得いかない。
「まあ……何にせよ、本人との絆を深めなきゃ意味ないんじゃないかな?」
「あ……確かにそうですね、」
「でしょ。どこかお出掛けに誘ってみたら?」
「そうしてみますね。ありがとうございました!」
けれど、対等な付き合いをするにはまず**先輩との絆を深めなければ意味がないわけで。とりあえずは彼女にとって気軽に誘える相手として認識してもらおうと、アドバイス通り駅前のカフェ辺りに誘ってみることにした。
日付は――来週の日曜日なら空いているが、先輩はどうだろうか。予定を擦り合わせるため、確認してみる。
『先輩!来週の日曜って空いてますか?』
『日曜なら空いてるよ。どしたの?』
『あの、駅前のカフェとかどうかなって』
『いいよ!ありがと♪』
かくして、俺にとってとても重要なものとなるであろう待ち合わせが決まった。
***
約束の日曜日。
指定した待ち合わせ場所である駅前で待っていると、少々遅れて**先輩の影が見えた。
「ごめん!ちょっと遅れちゃって……!」
「いえいえ、全然気にしませんよ!」
俺に対して、申し訳なさそうに謝る彼女。けれど、これからのことを想像すれば遅れてきたことだなんて全く気にならない。
まるで同年代の女性に接するように返してみた、はいいものの。
「先輩も、ちょっと抜けてるところあるんですね?」
「あはは……情けないな、ほんと」
まただ。
先輩はそうやって、自分が何かしたらすぐ『後輩に情けないところを見せた』と焦る。
年上なのに情けない、だなんて――そんなこと、一度も思っていないのに。彼女のことは、一人の女性として扱っているつもりなのに。
「いえ、情けなくなんてないですよ。可愛いじゃないですか」
「そうかな、」
「そうですよ!さ、行きましょう!」
可愛いと言われると照れたのか、少々顔を赤らめた彼女。
その手を引いて、予定していたカフェへと連れて行く。少しだけ対等な恋人に近づけた気がしたのは、きっと三浦先輩のおかげだろう。
ここから、もっと対等な関係へと近づけていくつもりだ。けれど、それはまた別の話。