コップの跡まで愛しいね

テストが一週間前に迫った、ある日の放課後。

「充〜!」
「ん、なに?」
「勉強教えて!お願い!」

俺は同級生で彼女でもある**に、勉強を教えてくれと頼まれていた。
自分で言うことでもないが俺は文系科目に強く、こうして文系が苦手な彼女の勉強を見てあげることはよくあることなのだ。

「ね、カフェ連れてってあげるから!新商品のみかんフラペチーノ奢るから〜!」
「もう……しょうがないなぁ」

最初は断ろうかとも思っていたが、あんな泣きそうな瞳で縋られてしまえば承諾するしかなかった。しかも、好物であるみかんを使ったフラペチーノを奢ってもらえるとまで言われてしまえば尚更だ。どうやら、俺は**に対して甘すぎるのかもしれない。
こんな風に振り回されるなら、別れて他の子と付き合えばいいと言いたくもなるだろう。けれど、違うのだ。広報部隊だからモテそうだとか、お前くらいのデキるやつなら女の子ひとりかふたりくらい簡単に落とせそうだとか――そんなことは飽きるほどに言われるが、決してそういう問題ではない。
俺は、**に惚れ込んでしまっているのだ。
初めは俺をただのいい奴としか見ていなかった、そんな**と恋人としての関係を結ぶに至るのはかなり必死だった。俺が真剣にお付き合いしようと思った唯一の相手でもある彼女だけには嫌われたくないし、手放したくもない。だから甘すぎると言われようが多少のわがままだって許せてしまうし、可愛いとさえ思えてしまうのだ。
これだけは、惚れた弱みとしか言いようがない。

「ありがと〜!充ってやっぱ頼りになるね!」

ほら、喜んだ時の笑顔だって誰のそれよりも可愛い。
そんな**にくらい弱くたって許されるだろうと彼女の手を握り、ふたり下駄箱へと向かった。