逆再生からはじめよう
「その、付き合ってください!」
「私でよければいいけど……どこに付き合えばいいの?」
「あ……やっぱ何でもないです!」
片想い相手の**ちゃんは、モテるくせしてかなりの鈍感だ。
付き合ってくれという頼みの意味すら勘違いするくらいだから、俺が好意を寄せていることになどさらさら気づいていないのだろう。そんな**ちゃんにやきもきする俺をイコさん達は彼女持ちと思い込み揶揄ってくるが、悲しいかな**ちゃんとはそこまでには至れていない。
もし本当にそんな関係になれたなら、どれだけ幸せだろうか。
「**ちゃん、」
そう呼び掛ければちゃんとこちらを向いてくれるから、可能性がないというわけではないようだ。けれど、長い時間をかけて接触を積み重ねて落としていけるほどの余裕は俺にはない。
こうなったら、強引にキスでもしてみようか。
そうすれば、否が応でも俺のことを意識せざるを得なくなるかもしれない――そう思い立った俺はそのままこの場を後にしようとする**ちゃんの二の腕を引き、驚く彼女を他所に唇を奪った。
「どうし…‥ん、んん……っ!」
そのまま1分間くらい重ね続け、離した頃には**ちゃんの顔が赤く染まっていた。
「もう……いきなり何してくれてるの、」
「こうでもせな、意識してもらえへんか思て。嫌やった?」
「嫌じゃないけどさ、反則だよ……!」
照れ隠しなのか顔を背け、聞こえないと思っているのか小さな声で「どきどきしたじゃん、」と呟く彼女。
俺の好意に気づいてくれた、俺を意識してくれたと――そう、受け取っていいのだろう。
「で、俺の好意は受け取ってくれるんかいな?俺の彼女になってくれるん?」
「う……うん!もちろん!」
「ほな、これからよろしゅう」
かくして、俺は本当に**ちゃんと恋人関係に至れることになった。
順番が色々と逆だとは俺自身でも思うが、何はともあれ彼女との交際が実現したのでまあ良しとする。