上位女子の掟があるもん

「おっきー!」

登校したての朝。俺に向かって手を振るのは、クラスメイトの**ちゃんだ。
彼女はクラスの中でも派手目な方で、いわゆる陽キャという分類に属する。男女問わず友達が多くポジティブでノリがいい、しかも細かい気配りもできて優しい彼女に想いを寄せる者は少なくない。
今日もまた防衛任務で休みだった俺を気遣ったのか、昨日の授業の内容が書かれたであろうノートを手にしている。

「昨日分のノート取ってたんだけど、見る?」
「ええの?おおきに!」
「いえいえ〜」

そうやってノートのやりとりをしているだけで、俺と**ちゃんをクラスメイトが取り囲む。その中には付き合っているのではないかと勘違いする者もいるが、実際はそういうわけではない。
ただのクラスメイトで友人、それだけだ。
それだけのはずの俺にここまで優しくしてくれるのは俺への好意かとも思ったが、あくまでも彼女の性格柄であり他意はないだろうと思い直すことにした。

「でさ、今日は放課後猫カフェ行こうと思ってるんだけど、どう?」
「猫カフェ!俺は猫好きやし、今日は防衛任務もランク戦もあらへんさかい。いけるで!」
「よし!」

そうして彼女と約束を結び、互いにまた手を振り席についた。

***

放課後。いつも通り**ちゃんと同じく派手目な友人と行くのかと思ったが、今日はどういうわけかその友人達は一緒ではなかった。
少し不思議に思いつつも、彼女に案内されるまま件の猫カフェに着く。

「おっきー、写真撮ろ〜!」
「それ、SNSに上げるん?」
「あー……目隠しした方がよかった?顔、出されたくないとかあるよね?」
「そんなんあらへんで!なんなら猫耳スタンプやらつけてみたいし!」

俺の返答を受け取ったのか、写真アプリで猫耳スタンプを設定した**ちゃんがそのままスマホを自撮りモードにし横持ちする。
そして数秒後。
軽いシャッター音と共に、猫耳をつけた俺と彼女の写真が撮られた。

「思ったんやけど、**ちゃんは俺と一緒におる写真上げても問題あらへんの?」
「え〜?逆に何かあるの〜?」
「彼氏彼女って勘違いされるかもわからへんよ?」

――いや、一番勘違いしているのは俺かもしれない。
**ちゃんは元々誰にでも優しいだけなのに、一瞬とはいえ俺への好意故かとも思ってしまったのだ。

「私はいいよ、それでも」
「……ええの?」
「というか、最初っからそのつもりだったし?」

つまり、最初からそう思わせるつもりだったと――**ちゃんはそう言った。それは、彼女が本当に俺に好意を抱いていたということで間違いないのだろう。
明日学校に行ったら噂になっちゃうね、などと冗談めかして続ける彼女に微笑みだけを返し、俺はこちらに歩み寄ってきた猫を撫でた。