壊れるから触れない
最近、ずっと目で追っている人がいる。
東さんだ。彼は他でもない、ボーダーで最初の狙撃手にしてトリオン狙撃の開祖であり、熟練した腕前と冷静かつ機知に富んだ戦術力、そして私を始めとする隊員たちに慕われる人望を持っている。
そんな彼は最近私にすごく世話を焼いてくれているが、しかしそれはただの面倒見のよさから来るものでしかないのだろう。今更、期待したって無駄なことだ――そう開き直り、トリオン体から換装を解き生身に戻る。
「**ちゃんに、佐鳥的にすんごい残念なお知らせで〜す」
私の表情に気づいたのか、先程まで共に訓練していた佐鳥が私に話を振ってきた。
「東さんのこと、いつも目で追ってるっしょ?」
「うん?」
「その東さんなんだけど、**ちゃんのことが好きだってこの間溢してたよ。聞いてないの?」
「……え?」
まさかの知らせに、耳を疑った。
いつも調子のいい佐鳥のことだから、嘘ないし誤解の可能性はある。しかし女の子が大好きな彼だ、女の子周りに関しての観察眼は鋭いのだろう。
「**ちゃんみたいな、明るくて性格のいい子が好みなんだって」
「そうなの?確認してみる、」
「りょ〜かい。あ、もし振られたらまた言ってね〜」
とはいえ、彼からの情報だけを鵜呑みにするわけにもいかない。
なので、私はこれから東さん本人に確認しに行くことにした。空振りに終わる可能性を考えれば時間の無駄なのかもしれないが、それはこの際置いておこう。
***
「東さ〜ん!」
運の良いことに、その本人は廊下を通っていたのですぐに捕まった。
誰もいないのを確認し、問いかける。
「あの、私のこと好きとかって噂されてたんですけど……」
「ん?……ああ、あのことか」
「そんな訳ない……ですよ、ね?」
私が言いたいことは全て言い終わり、あとは東さんの返答を待つだけ。
それだけなのに全身に緊張が走り、心臓が全く心地よくない高鳴りを見せる。
「……ああ、合ってる」
「え……えっと、それは?」
「お前にわかりやすく好意を寄せていたつもりなんだが……気づいていないのか?」
東さんが私を好きだというのは、どうやら本当だったらしい。私に世話を焼いてくれていたのも、私への好意故だったようだ。
喜ばしい気持ちは確かにある反面、ずっと心のどこかで期待していただけに本当に自分でいいのかと不安になってしまう。そんな私を宥めるように、彼は優しく頭を撫でてくれた。
「わ、私でいいんですか?」
「ああ、**じゃないと駄目なんだ」
「じゃあ、なんで直接言ってくれなかったんですか……っ、」
「お前が変な目で見られたら、嫌だろう?」
曰く、私がボーダーの中で『東さんの片想い相手』という肩書きで見られる可能性が先に立ってしまい、ずっと伝えられなかったらしい。
確かに、ヒュースに関する噂を上書きしてしまえるほどの影響力を持つ東さんならばそれが理由になってもおかしくはないなと、どこか納得させられてしまう。
「あ……なるほど、それで」
「わかってくれたか?」
「はい、」
「じゃあ、改めて。……受け入れてくれるか?」
受け入れるも何も、それは最初から私の台詞だ。もちろん、拒否する理由などどこにもない。
何も言わず頷き返せば、彼はそれを合意と受け取ったのか優しい優しい笑みを見せた。
お題 ▶︎ お題ガチャ「いろんなシチュガチャ」様より。