鈴蘭の箱庭
※夢主ちゃんの依存度高め(当社比)
***
鈴蘭の甘い香りが漂う、私と彼の箱庭。
鍵が閉まっているこの部屋には、私達以外には誰もいない。
どのぐらいの時間、こうしていたのだろう――そんな疑問が浮かびもしたが、今はもうどうだっていい。
さっきから、身体が熱くて堪らない。
「ちかぁ…っ、」
朧げな意識の中で、譫言のように名前を呼んで。
向き合っている彼の裾を、手探りで引き強請ってみる。
「どうした、」
「…熱いよ…っ、お水…ほしい…」
「了解。少し待ってなさい、」
そう言って立ち上がる彼。しばらくすると、ペットボトル入りの水を持ってこちらに戻ってきた。
私の顔を覗き込み、右手の指で唇を撫でる。
「開けて、」
言われるがままに開けば、水を口移しで飲ませてくれた。
甘くて冷たくて、少しだけ桃の味がする。
「…っん、ん…!」
「**…大丈夫か、」
力の抜けた私を、彼の左腕が支える。
この状態で何口か水を飲み終えたら、ふわりと布団に降ろされた。
言葉だけは労わるようなものだったが、本当はそんなつもりなど全くないのは知っている。
何より、私を見下ろす翡翠色の瞳が熱くて、鋭い。
「うん、大丈夫…もっと、ぐちゃぐちゃに溶かして…?」
「…まだ、満たされたいのか」
あんなに熱のこもった瞳で見下ろされれば堪らない。
私の心の隙間が彼でいっぱいになるまで、満たしてほしい。
「口移しだけじゃ、足りないの…どうなってもいい、から…!」
「ああ、そこまで言うなら」
ゆっくりと覆い被さられ、唇を奪われる。
今の私には、身じろぎのひとつも許されていない。
「…っん、ぁっ…」
――来た。
頭まで、蕩けるような感覚。
さっきの口移しの時とは全然、違う。
彼の右手が、ゆるゆると後頭部を撫でる。
私を可愛がっているのか、逃がすまいとしているのか――おそらく、その両方だろう。
「んぅ…ぁ、ちかっ…」
「…っは、」
「ん、ん…っ、」
舌を絡められて、吸われて――私はただひたすらに追っていく。それをしばらく続けていると、彼は私が苦しくなったのに気づいたようで、そっと口を離した。
呼吸を整えることに意識が向いているからか、呂律がうまく回らない。
くらくらと、頭まで回らなくなっていく。
ずっと、こうしていたい。このまま、この箱庭で溶け合ってしまいたい。
「…ぁ、ちーか…っ、」
「よしよし…気持ちいいな?」
顎を掬われ、目を合わせる。
目の前の彼の瞳には、蕩けた顔をした私が映っていた。
「**、次はこっち。…俺のものって印、つけなきゃな?」
「いっぱい頂戴…お願い…」
するすると服のリボンを解く音がして、ぱちりとボタンも外された。
そうして露わになった首元に痕をつけられていく度に、ちくりと痛みが走る。
「…っ、んぁっ…!」
「**…力、抜いてなさい…」
全てを預けて受け入れる。
もっと、もっと乱して。満たされて、溺れるくらい注いで。つけられる痕も、この痛みも…全部、全部受け止めるから。
だからお願い。私の、私だけの――
「ね、ちか…っ、ちーかぁ…」
「…どうした、」
「どこにも、行かないで…ずっと、一緒にいて…!」
「ああ、ずっと一緒だな。…俺の、俺だけの**」
鈴蘭の甘い香りがする部屋。ここが、私と彼の箱庭。
甘さも毒も全て注がれて、満たされて溺れて溶け合うの。